勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

2022年下半期に読んだ本まとめ

2022年7月~12月に読んだ本のまとめ。カウント対象は期間中に読み終わったものに限り、読みかけの本は対象外としている。あとコミック、漫画雑誌類もけっこう読んでいるのだけれども、これは除外。
この6カ月56冊の本を読んだらしい。2022年通年で読んだ本は125冊だったようだ(わりと平常運転)。いつもどおり半期で読んだ本の中で良かったものをピックアップしてみる。

文芸書のおすすめ(一般編)

今年の話題の書であり抜群に面白かったのは「同志少女よ、敵を撃て」なのだけれども、この半期で心に残ったのは児童書「エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 18)」である。
エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 18)
どうして本書を手に取ったのかというと、文学者の池澤夏樹さんとその娘である春菜さんの対談集「ぜんぶ本の話」で紹介されていて、そういえば読んだ記憶が無かったからだ。なお「ぜんぶ本の話」は児童書からSF小説まで多数の書籍が紹介されていて極めて危険な本(読むと、読みたい本が増えてしまう)。

というわけで読んだのだが感想は「読まずに死ねない」である。ネタバレになるので何も言わないが、極めてエレガント!

文芸書のおすすめ(趣味のSF編)

最近SF分野は豊作。シリーズものとして「三体X 観想之宙」も「火星へ」も良かった(そしてそれぞれ続刊が出ているので読まねば)。傑作短編集として「新しい世界を生きるための14のSF (ハヤカワ文庫JA)」も最高だったのだけれども、今回はこれをピックアップしておこうと思う。
サーキット・スイッチャー

完全自動運転車が普及した2029年の日本。自動運転アルゴリズム開発会社の社長・坂本は、仕事場の自動運転車内で突如拘束された。襲撃犯はその様子をライブ配信し首都高の封鎖を要求、さもなくば車内に仕掛けた爆弾が爆発すると告げる……迫真のテクノスリラー
サーキット・スイッチャー

SFとしての飛躍は大きくなく、わりとありそうな近未来の話。特にソフトウェアエンジニア界隈の人は楽しく読めると思う。おすすめ。

教養書のおすすめ

抜群に面白かったのは「東京大学「ボーカロイド音楽論」講義 (文春e-book)」。割と内容が哲学していて面白かったし、解説を読みながら楽曲を聴くというのが楽しかった(そういえば、楽曲や歌詞に集中して音楽を聴くという体験を意識的にやったのも久しぶりだった)。
東京大学「ボーカロイド音楽論」講義 (文春e-book)

なお楽曲リストは著者のYoutubeチャンネルにまとまっているので読書とお供に。

ビジネス書のおすすめ

畑村先生の「新 失敗学 正解をつくる技術」をおすすめしておきたい。最初の失敗学の本「失敗学のすすめ (講談社文庫)」から20年目の正統続編ということもあるが、現代における失敗学の大切さが語られていて考えさせられる本になっていると思う。
新 失敗学 正解をつくる技術

私はこうした活動を通じて、日本の産業の近年の長い低迷の根本原因に、私たちの社会が「これが正しいとしてきた考え方」そのものに限界があるのだと考えるようになりました。私たちは、歴史的に培われてきた考え方ーー「正解」がどこかにあり、それに従って真面目にやっていれば大丈夫というという考え方ーーがあるという文化に染まっているのです。しかも自分たちではそのことに気づいていません
新 失敗学 正解をつくる技術

技術書のおすすめ

年末にすべりこみで読んだ「エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法」が抜群によかった。エンジニアリングマネージャという職種定義がない従来型のSIer的企業に勤めている自分にとってもたいへんに参考になる。取り扱っている話題が網羅的で、自分にとっては後進指導の役に立つと感じられる良書である。
エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法

ちなみにこの本は各章のエピグラフイカすのだけれども、出展とかいずれ調べたりして遊びたい。

この半期の振り返り

この半期というか今年全般で言えば、技術書読みが停滞しているという課題感を改めて感じる。自分はスキマ時間で本を読むことが多いのだが技術書がそこにはそぐわないという点と、まとまった時間は大学講義の視聴や資格勉強にあててしまうというのが背景にはあるのだけれども、ちょっとまずい。また、読みたい技術書の積み(罪)も高まっているので、来年はもっと積極的に技術書読みに振っていきたい。

2022年下半期に読んだ本

  1. 無理ゲー社会(小学館新書)
  2. 地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる
  3. 同志少女よ、敵を撃て
  4. バビロン3 ―終― (講談社タイガ)
  5. 「データと対話」で職場を変える技術 サーベイ・フィードバック入門 これからの組織開発の教科書
  6. ぜんぶ本の話
  7. 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)
  8. 働く人改革 イヤイヤが減って、職場が輝く! ほんとうの「働き方改革」 できるビジネスシリーズ
  9. 回復力 失敗からの復活 (講談社現代新書)
  10. 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫)
  11. 図解 組織開発入門 組織づくりの基礎をイチから学びたい人のための「理論と実践」100のツボ
  12. 5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる (PHP新書)
  13. ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
  14. アトミック・ボックス (角川文庫)
  15. 哲学の最新キーワードを読む 「私」と社会をつなぐ知 (講談社現代新書)
  16. なぜ、あなたがリーダーなのか[新版]――本物は「自分らしさ」を武器にする
  17. Google×スタンフォード NO FLOP! 失敗できない人の失敗しない技術
  18. 三体X 観想之宙
  19. 人間の建設(新潮文庫)
  20. だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)
  21. 疫神記 上 (竹書房文庫)
  22. 疫神記 下 (竹書房文庫)
  23. コンピュータの構成と設計 MIPS Edition 第6版 上 ⇒ (★書評1★書評2
  24. コンピュータの構成と設計 MIPS Edition 第6版 下 ⇒ (★書評3★書評4
  25. 知ってるつもり 無知の科学 (ハヤカワ文庫NF)
  26. 進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」 (海士の風)
  27. クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界
  28. 床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫)
  29. 東京大学「ボーカロイド音楽論」講義
  30. エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 18)
  31. 新しい世界を生きるための14のSF (ハヤカワ文庫JA)
  32. GREAT BOSS(グレートボス) ―シリコンバレー式ずけずけ言う力
  33. 達人が教えるWebパフォーマンスチューニング 〜ISUCONから学ぶ高速化の実践
  34. invert II 覗き窓の死角 城塚翡翠
  35. 新 失敗学 正解をつくる技術
  36. システム開発・刷新のための データモデル大全
  37. 火星へ 上 (ハヤカワ文庫SF)
  38. 火星へ 下 (ハヤカワ文庫SF)
  39. マスターアルゴリズム 世界を再構築する「究極の機械学習」 ⇒ (★書評
  40. 鉄騎兵、跳んだ
  41. ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律
  42. サーキット・スイッチャー
  43. 現代美術史-欧米、日本、トランスナショナル (中公新書)
  44. 図書室で暮らしたい (講談社文庫)
  45. 日本沈没 決定版【文春e-Books】
  46. 22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書)
  47. 歴史とは靴である (講談社文庫)
  48. 旅行鞄にはなびら (文春文庫)
  49. NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか?
  50. NOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか?
  51. 哲学思考トレーニング (ちくま新書) ⇒ (★書評
  52. 東京藝大で教わる西洋美術の見かた 基礎から身につく「大人の教養」
  53. モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方 ⇒ (★書評
  54. 絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか (日本経済新聞出版)
  55. エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
  56. 日本語練習帳 (岩波新書)

過去の読書ふりかえり記事

あと過去にこんなのも書きました