勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

頭を良くしたいので「哲学思考トレーニング」を読んだ #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第48回。常時、けっこうな量の積読があるのだけれども、知り合いと読書期日を約束することによって消化が捗るという仕組み。過去5回分のログはこんな感じ。

今回取り上げるのは「哲学思考トレーニング (ちくま新書)」である。

本書を手に取ったきっかけは以下のブログ記事を1年前に見たからだ。
note.com

分析哲学者による知的主張の作法シリーズ、その2です。日本における分析哲学の権威のひとりによる、哲学を通したクリティカル・シンキング入門(あるいはその逆)です。何を疑い、何を確かなものとして信じるか、価値についての答えの出ない問いにどうやってより確かな解を出すか、といった手法が、極めて洗練された濃縮度の高いやり方で展開されます。よりよく考えるために、これはぜひ読んで欲しい本。
CTOが選ぶ、エンジニアのみなさんに個人的に読んでほしい本|藤村|note

紹介されている通り、新書で267ページというサイズにもかかわらず、極めて濃厚な本であった。

クリティカルシンキングとは

本書が紹介している哲学思考は「哲学的クリティカルシンキング」と呼ばれているものである。

  • 直訳でもあるが、批評的思考ということになる
  • 批評:ある意見を鵜呑みにせずよく吟味すること
  • 本書で扱う哲学的クリティカルシンキングでは、「ほどよい懐疑主義」を目標とした思考法を組み立てることを目標にしている

類似のもので、とくに社会人になると企業研修で学ぶ機会の多い「ロジカルシンキング(論理的思考)」がある。本書の中で触れられているわけではないため自分の考えではあるが、ロジカルシンキングが思考の論理的な正しさを築くベースであるなら、クリティカルシンキングは思考の精度を向上させるような役割と考えることができるだろう。

「哲学思考トレーニング」の感想

というわけで本書はエッセイ形式で事例を交えながら「哲学的クリティカルシンキング」を説明していくのだが、より理解を深める仕掛けもあって、とても良い本だった。

まずは冒頭から最後まで読み進めることによって、「哲学的クリティカルシンキング」の概念や思考のツールなどについて把握することができるようになっている。
そして最後に改めて「哲学的クリティカルシンキング」の流れと思考ツールを俯瞰して、本書を読み直すガイド章が付随しているのである。全体像を把握した上で、このガイドに従ってもう一度読み直すことによって理解が深まるというのは、なかなかよかった。

本書を読む事によって、いままで無自覚的に行ってきた議論や判断の一部は、極めて感覚的で精度が低かったことかわかった。本書で紹介される手法を用いて、自分の一次判断を疑い、洗練することができるようになる気がする。

なによりコンパクトで薄い本なので、自分に合わなくてもダメージは少ないだろう。いったん手に取ってみることをお勧めする。

本書では、さらなるトレーニングのための書籍もいろいろと紹介されている。私はこの本にチャレンジしてみたい(まずは書店か図書館で試し読みしてから)