中高年になってしまったので、中高年危機について勉強したり考えている。というわけで何回かに分けて調べたことや考えたことをアウトプットしていきたい。明確な構想を立てているわけではないので、先に進むにつれて考え方も変わるかもしれない。今回は「モダンエルダー」を読んだ感想を中心に書いていく。
中高年とは
最初に中高年の定義について明確にしておこうと思う。
法制度の定義をみると、例えば「高年齢者等の雇用の安定に関する法律」では、「中高年齢者」を45歳以上、「高年齢者」を65歳以上とに分けて設定されている。また「21世紀における国民健康づくり運動」の中でも、45歳から64歳までが中高年として提示されている。
本書においても、中高年の開始年齢をめぐっては、概ね40代後半頃からであると想定している。
(中高年の心理臨床〔新訂〕 (放送大学教材) 第1章、より)
「中高年の心理臨床」はだいぶ興味深い本なので次回記事で取り扱う予定である(まだ読み終わっていない)
モダンエルダー(新しい年長者)
というわけで今回取り上げるのはこの本。家族や職場の同僚に表紙を見られると恥ずかしくなるやつ。
簡単に紹介すると、こんな本である。個人の感想です。
- 20代で起業し、最終的には世界第2位のブティックホテルチェーンを経営していた著者が52歳で米Airbnbに転職。転職後はAirbnbのCEOのメンターを務めつつ、ホスピタリティー部門の責任者として活躍。その経験を踏まえて「新しい年長者(モダンエルダー)」の在り方を説明するという本
- 上記の通り著者はエンジニアじゃない。またAirbnbに入社後もエンジニアをしているわけではない(つまりエンジニア的な文脈はまったくない)
- 一方で、Airbnbは著者を除けば平均年齢の若いスタートアップだ。そのような組織で年長者がどのような価値を発揮していくのか、また何を学んでいけるのかということが紹介されていて興味深い
- 「新しい年長者(モダンエルダー)」とは「優れた判断力」「本物の洞察」「EQ」「俯瞰的な思考力」「奉仕の心」を持つ年功者(単なる年長者ではない)であり、デジタル世代の若者を支援する人材像のこと
日経ビジネスのサイトでは本書からの抜粋が一部読めるので、雰囲気を知りたい人はあわせてどうぞ。
- 人生は50代から、仕事で生きるビンテージの価値:日経ビジネス電子版
- グーグルなど成功企業を支える「モダンエルダー」5つの特徴:日経ビジネス電子版
- ドラッカーの著作は65歳以降が大半、人は死ぬまで進化できる:日経ビジネス電子版
著者のチップ・コンリーのTED Talksもおすすめ。大枠を短時間で掴める。
www.youtube.com
なお、この後いろいろ書くけれども、良い本である。取り上げていない箇所でもいろいろ考えさせられる事が多かった。中高年におすすめ。
モダンエルダーは脱・老害の道?
老害というと、高い職位や権力を笠に古い知識をひけらかすというイメージがあるだろう。モダンエルダーはそういう意味では「脱・老害」の道と考えることができる。
本書の著者はメンターンという造語を用いてモダンエルダーの姿勢をこう説明している。
- チームに対してはインターンとして振舞う(メンバーから素直にデジタル知識を吸収する)
- メンバーに対してはメンターとして振舞う(自分の持っている知恵をもって、メンバーの課題解決を支援する)
これは「脱・老害」していると言えるのではないだろうか。本書では良きメンターンになるためのアドバイスがたくさん掲載されていて(中高年としては)刺激になる。もちろん自己変革と強い学習マインドセットを要するが、老害になってしまうよりは良いだろう。個人的にもがんばりたい。
モダンエルダーはマネジメントトラックへの道か?
この本を読んでチラつくのはエンジニア「引退」「ジョブチェンジ」だ。モダンエルダーになるのは現場から離れてエンジニアとしてではなく、マネージャーとして働いていく道の選択になってしまうのだろうか。
著者のチップ・コンリーがそもそもエンジニアではないし、エンジニアにもなろうとしていないのだがら、そういう印象を持ってしまうのは仕方がないだろう。しかし、本書をある種の「マネジメントトラックへの道」と捉えて避けてしまうのであれば、それはちょっともったいないような気がしている。
- どちらにしろ、人は老いる
- 同世代だけで働くことは難しい。他世代と働く方法について考えないわけにはいかない。中高年は年下の人間と働くことをもっとうまくならなければいけない
- 著者は本書で、現代は『人間の歴史上はじめて、5世代が同じ職場で一緒に働いている』時代だと書いているし、確かにそうだ
- 世代間を越えたある種の良いコミュニケーションの方法をモダンエルダーは示している
- 特に本書では次のようなテーマも扱われているので参考になる
- 自分より若い権限者(いわゆる年上上司)と、どうやってコミュニケーションしていくか(実例から戦略まで)
- 自分より若く、自分よりもスキルも高い世代(本書ではDQ:デジタル知性と表現されている)とのコミュニケーション方法
マネジメントトラックを走らない人にも学びが多いのではないだろうか。
中高年の目覚め
自分の一つの興味はエンジニアにとっての中高年危機である。じつは本書でもダイレクトに中高年危機について触れられている箇所がある。
人生の半ばに「中年の危機」が訪れると言う人は多い。だがそれはむしろ「中年の目覚め」だと私は思っている。
人生は楽しいし、これからますます楽しくなっていくはずだ。
(モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方 第1章、より)
あー、そうなりたいんですよね。幼年期の終わり的な感じで。
次回につづく。