読むのがホネな技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第90回。同僚と読書期限を約束することによって積読が確実に減るという仕組み。過去記事はこちら。
今回とりあげるのは「Aligned ―プロダクト開発におけるステークホルダーとの関係性の築き方」だ。Alignedの意味は「揃える」で、ビジネス的な文脈でいえば「足並みを揃える」となる。まさに、組織の足並みを揃えるようなことが書かれているようだが、実際のところはどうだろう。
物語形式が読みやすく、しかしウッとなる
さて、本書の特徴はストーリー仕立てであるということだ。古くは有名な「ザ・ゴール」形式というか、主人公がいて、様々な困難に立ち向かいながら(都合よくいろんな人にアドバイスを貰って)解決していくという仕立てになっている。これが本書のテーマであるステークホルダーとの関係性の構築にうまく当てはまっていて、素晴らしいというのが感想である。特に人間関係に関するテクニックを学ぶ際に重要なのは共感だと考えている。いくら方法論やフレームワークを習得しても、困った時に出てこないと困るのだ。そういう時に、ストーリーで理解しやすい私たちの脳に物語でスッと入ってくる点が良い。ハマった時に「そういえばアイリーはこんな時……」と思い出すことができるだろう。たぶん。
というわけで先走ってしまったが、本書は健康系のアプリを開発する会社にプロダクトマネージャーとして転職してきたアイリーという主人公が奮闘する物語を中心に展開していく。同じようなシチュエーションになったことがないので実際のところがどうなのかはわからないが、オンボーディングが超雑で驚き、その後も組織がカオスで泣ける。
組織マネジメント、リーダーシップ論ではないのが良い
組織の足並みが揃っていない状況でありがちなのが、組織マネジメントの問題であったりリーダーシップの課題だと考えることだ。まあ、もちろんそれらの機能不全が原因ということはあるのだと思うけれども、往々にしてないものねだりになってしまう。
本書では組織の足並みが揃っていないという課題に、(主にアイリーが)権限を持たない立場で周囲を巻き込んでいくというアプローチとなっている点が良い。メンバーの立場からもアクションできるからだ。
チーミングや自己組織化の話ではないのも良い
組織の足並みが揃っていない状態というと、チームビルディングの問題じゃないか? アジャイルの文脈からするとチームの自己組織化に課題があるのでは? コーチを入れると良いのでわ……みたいな話にもなりがちだが、本書はそういった方向性からも距離を取っているという点も良いと思っている。
もちろんチーミングがうまくできたり、自己組織化に成功すれば良いのだけれども、あくまで当事者として対処するのが本書の流儀のようである。というわけで、アイリーはあくまで1人の担当者として考えていく。
その他本書で勉強したこと
というわけで本書は一種のステークホルダー分析と対策の話なのだが、いくつか興味深いテクニックや解決策の提示もある。個人的に気に入ったものをピックアップしておく。詳細は書籍を参照。
- パワープレーヤー見極めのための「支配的職能のための質問」
- 「上流ステークホルダーと下流ステークホルダー」身も蓋もない分類だけど、なるほどと感心した
- 「DACI意思決定モデル」RACIモデルは知っていたけど、これは知らなかった。
- 「ステークホルダーキャンバス」なんでもキャンバスにするのは反対だけど、ステークホルダー一覧としてみても良い整理という印象
- 「衝突を探るテクニック」たとえばワークショップで意図的にひどいアイデアを紹介して判断基準について探るなど、実際にやれるかは別としてテクニックとして知っておくのは良いと思う
- 「ノーと言うときのコツ」こう言うのはいくらでも持っておきたい
でも本書はプロダクト開発のときの話なんでしょう? いや、そうでもない
というわけで、なかなか良い本だと思っている。だけどタイトルにもあるように「プロダクト開発」向けの本である。ではその他のソフトウェア開発プロジェクトでは活用は難しいだろうか。いや、そうでもない。
- 受託開発などでも、複数部門が関与する大規模プロジェクトでは似たような話になりがち
- たとえば基幹システムとか、ERPの導入など
- システム部門の人など、組織のアラインメントが取れなくて、よく引き裂かれているので参考になるのでは
そもそも、大変に読みやすい本でもあるので、プロダクト開発にスコープを狭めず手に取ってみれば良いのではないだろうか
というわけで、本書の感想はここまで。さて次は何を読もうかな。
引き続き気になっている本はこれ(消えた本は実はもう読んでしまっている)











