読むのがホネな技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第91回。同僚と読書期限を約束することによって積読が確実に減るという仕組み。過去記事はこちら。
今回とりあげるのは「エンジニアリング戦略の作り方 ―エンジニアリングの難局を打破する意思決定」だ。エンジニアリングマネジメントの領域で良書を多数発表しているWill Larsonさんの新しい訳書であり期待値が高い。しかも前著でもトピックとして興味深かった「戦略」に関する深掘りである。
Will Larsonさんの過去の本についての私の感想はこちら(エレガントパズルも読んだけど感想書いてなかった)
- 「スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ」をマネジメントの観点で読んだ - 勘と経験と読経
- 就任予定はないけど「エンジニアリング統括責任者の手引き」を読む Part.1 - 勘と経験と読経
- 就任予定はないけど「エンジニアリング統括責任者の手引き」を読む Part.2 - 勘と経験と読経
本書の概要
様々な企業(日本で有名なところで言えばStripeやUber)でエンジニアリード等を担ってきた著者が、エンジニア戦略に特化して書き上げた本である。その特徴としては理論だけでなく、具体的な事例を多数収録していることで、類書と異なり「どう考えるべきか」「考えた結果をどう文書化するか」について事例から深く学ぶことができる書籍になっている。
なお、本書の概要は、訳者の岩瀬さんが紹介スライドを公開しているのでそれを見るのが良いだろう。
エンジニアリング戦略の作り方 / Crafting Engineering Strategy - Speaker Deck
全般的な感想
本書が素晴らしいのは「システム思考」と「Wardleyマップ」についての考え方について具体的な事例つきで学べるという点だ。今のところまだ「Wardleyマップ」については腹落ちしていないので参考にする程度だが、「システム思考」について、考え方だけでなく分析方法から戦略にどう落とし込むか、までが示されているのが目から鱗が落ちるほど良かった。
例えば「16章 サービスマイグレーション戦略」ではUberのサービスプラットフォーム拡張方針についての説明となっている。単純にいえばインフラチーム頼みのプロビジョニングは破綻することが予想されるので、投資を行いセルフサービス化(今であればプラットフォーム化)するという戦略である。
日本語での読みやすい文章は本書を購入して読んでいただくとして、この分析については著者サイトでも紹介されている(英語)
lethain.com
この分析過程ではシステム思考を用いたモデルの構築とシミュレーションが行われているのだ。達人にとっては当たり前なのかもしれないが、ここは私にはけっこうなショックである。なるほど、こう使って文書化すればいいのね!
たとえばこの事例をたとえば絵に書くとこうなるが(ここまでは時々やる)、それだけでは不十分だと言うことだ。

Loppyで作成したモデルへのリンク
著者はPythonベースでモデルを作成し、パラメータを変えてシミュレーションしてデータを作成した上で、その結果をグラフ化することで戦略文書の読者に示している。結果は見た目的には実験論文のようになるが、その結論は単純明快である。いいな、これ。
本記事では一つの例を紹介したが、こんな事例が複数示されていて勉強になった。
同様に「Wardleyマップ」についても事例が豊富でこちらも参考になる。ただこちらの考え方はまだ自分の中で使いどころが腹落ちしていないので、現段階ではストック扱いである。
本書で紹介されている参考書籍について
本書では様々な書籍も参考文献として挙げられているので、少し触れておこう。
これは前著「エンジニアリング統括責任者の手引き ―組織を成功に導く技術リーダーシップ」でも推薦されていたので読んだが、戦略を考える際の必読書だろう(自分も所属会社で勉強会を行なった)。近年発売された他の技術書籍でも頻繁に引用されている(こちらの記事で触れた:前略、戦略 - 勘と経験と読経)未読。訳書もなさそうだが読んでみようと思っている。読んだらメモを公開する予定。こちらも未読。訳書もおそらくない。本書の巻末では紹介されていないようだが、文中で推薦されている。読んだらメモを公開する予定。というわけで、本書の感想はここまで。さて次は何を読もうかな。
引き続き気になっている本はこれ




















