読むのがホネな技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第93回。同僚と読書期限を約束することによって積読が確実に減るという仕組み。過去記事はこちら。
数年前に読んだ『良い戦略、悪い戦略』は、いまでも戦略論の入門書として真っ先に名前を挙げる一冊だ。その著者であるリチャード・P・ルメルトが新たに書いた『戦略の要諦(The Crux)』を今回は取り上げる。
正直なところ、前著を読んだ時からずっと思っていたことがあった。
「で、良い戦略が何かは分かった。でも実際にどうやって戦略を考えればいいの?」という疑問である。
本書はまさにその問いへの答えになっている。
前著が「良い戦略とは何か」を論じた本だとすれば、本書は「どうやって良い戦略を生み出すか」を論じた本と言える。
「良い戦略、悪い戦略」のおさらい
本書を紹介する前に、有名な『良い戦略、悪い戦略』を軽くおさらいしておこう。
前著で繰り返し語られる戦略の本質は非常にシンプルだ。
戦略の基本は、最も弱いところにこちらの最大の強みをぶつけること
言い換えるなら、「最も効果の上がりそうな場所に最強の武器を投入すること」である。
当たり前のようだが、多くの組織は実際にはそうなっていない。事業計画になんとなく良さそうな施策を並べたり、スローガンを掲げたり、全方位に投資したりする。
しかしそれは戦略とは呼べない。
前著では、良い戦略は「カーネル(核)」で構成されると説明されていた。
- 診断
- 基本方針
- 行動
まず状況を正しく診断し、どの方向で解決するかを決め、それを実行する行動へ落とし込む。これが良い戦略の基本形である。
私はこの考え方に非常に説得力を感じた。
一方で、前著はあくまで「良い戦略とは何か」の本であって、「戦略をどう発見するか」についてはそこまで詳細には語られていない。終盤の第17章「戦略思考のテクニック」で多少触れられてはいるものの、どちらかと言えば概念紹介にとどまっている。
だからこそ本作が面白い。
本書のテーマは「Crux(核心)」
本書をひとことで要約すると、
戦略とは、課題の核心(Crux)を見つけ、それを攻略することである
という話になる。
ルメルトは戦略を立案する際、まず解くべき問題の核心を見つけなければならないと主張する。重要なのは、問題そのものではない。問題を引き起こしている「本当のボトルネック」である。そこを発見できれば、打つべき手も自然に見えてくる。
逆に言えば、多くの戦略策定は問題の本質を見誤った時点で失敗している。
本書では数多くの事例が紹介される。SpaceX、Salesforceなど、現代の著名企業も題材として取り上げられている。
いずれの事例も表面的な成功要因ではなく、「彼らは何を核心的課題として認識したのか」という視点で分析されているため読み応えがある。
また前著同様、「戦略コンサルタントが好む空疎なフレームワーク」に対する著者の容赦ない批判も健在である。ここは相変わらず痛快だった。
また後半(第5部)では 戦略ファウンドリーという著者が提唱するメソドロシー(グループワーク)が紹介されていて参考になる。
特に良いと思った点
前作でも度々触れられていた「目標と戦略の混同」に加えて、パーパスやMVVに関する誤解についての主張は(私は)強く共感できる。
目標と戦略の混同
- 戦略を立てるにはまず目標を決めなさい、というまちがったアドバイスが世の中に流布している
- 目標が先ではない
- 「真の差別化を図る」とか「新しい能力を開発する」といったものは戦略ではない。それは単なる野心か、願望だ
- 現実的に取り組み可能でなければ、戦略ではない
パーパス、MVV
- 高邁なパーパスを掲げても、利益を優先しても、本書が論じる課題ありきの戦略にはまったく役に立たない。そんなものに時間と労力を注ぐのは無駄である
- どうしても何かぶち上げたいならモットー程度にとどめるように
前作が未読の人へのアドバイス
というわけで本書も大変に良い本だったが、未読の方へのアドバイス、見解も示しておこう。
前作も大変面白い本だが、まず本書を読めば前作のテーマである「良い戦略」についても理解できるだろう。というわけで 前作から読む必要もないし、興味があれば本作から手に取れば良いと思う。また、本作のあとに必ずしも前作を手に取る必要もない。
もちろんルメルト節が好みだった場合は別だ。
さて、本書の感想はここまで。次は何を読もうかな。
現在 気になっている本はこれ









