勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

おっさんエンジニアの放送大学教養学部に入学記録6(3年目後期終了)

2020年4月から放送大学教養学部「人間と文化コース」に入学して、これまで勉強してこなかった人文系の勉強を始めている。3年目後期が終わったので感想をまとめておく。最近IT業界界隈でも放送大学に関する記事が増えてて興味深い

目次

最近、技術者界隈でも放送大学の記事をちらほらと見るようになった

技術者ということで「情報」コースを履修している人がほとんどだけれども、いろいろ情報が出てきて参考になる。取りたい科目が増えてしょうがない
kernhack.hatenablog.com
note.com

放送大学いいですよ。

さて、それでは自分はどうだったかという、ふりかえりはここから。

3年目後期に受講した科目

卒業を目標にしていないので、半期に2科目受講+1科目聴講を目安にしている。後期はIPAシステム監査技術者の勉強も並行していた(ただし残念ながら不合格)ので、まあまあがんばった感じ。放送大学に入学した目的は人文系の教養力アップなので、芸術系、哲学系、文化人類学系を中心に選ぶようにしている(が、最近は心理学系も気になっている)。

現代の危機と哲学(’18)

現代の危機と哲学 (放送大学教材)

私たちは、現代世界が深刻な危機に瀕していることを肌で感じている。漠たる不安に襲われ、何が真に問題なのかと問い、自分で考えようとするとき、ひとはすでに哲学し始めているのである。本講義では、現代人の思考にとっての手引きとなる巨星たちに学び、今日的問題を独自に考えてゆく。まず、現代の危機を予告した十九世紀末の哲学者ニーチェの言葉「神は死んだ」に着目する。続いて、二十世紀という危機の時代を生き抜いた二人の哲学者、ハイデガーアーレントに学びつつ、死と誕生、労働と行為、大学と学問、科学技術といったテーマに取り組む。

  • ラジオ科目。ハイデガー近辺の内容は極めて難しいが、主任講師の森先生の話がわかりやすく、良い講義だった。
  • 講義の主軸はハンナ・アーレントの「活動的生」と思われるが、そこに至るニーチェハイデガーアーレントの道筋の説明の組み立てが巧妙だと思う。
  • また、哲学することについても考えさせられる示唆に富んだ森先生のコメントに刺激を受けた。
  • アーレントについては殆ど何も知らない状態で受講したが、最終的には「活動的生」を読んでみたいと思うくらい(値段に躊躇しているけど)
  • 受講した結果、現代/現在についての考え方が変わったと思う。目から鱗が落ちたよ

アメリカの芸術と文化(’19)

アメリカの芸術と文化 (放送大学教材)

大衆を巻き込んでポピュラーな展開を見せた20世紀アメリカの文芸、美術、音楽、映像の諸例に幅広くふれながら、現代という時代がいかにして立ち上がり、どのような方向性をもって進展してきたのかを考察する。

  • テレビ科目。この講義も教養拡充という意味では大変に素晴らしかった。日常的に慣れ親しんでいるアメリカ文化、その表層しか理解していないことがわかった。
  • ディズニー文化、カントリーミュージック、フォーク、映画、ドラマ、ジャズ、ロック……現代日本人にとってはそれぞれ子供の頃から触れて、それなりに理解したり楽しんだりしていたつもりだったが、その背景は想像していたものとまったく違っていた。見方がぜんぜん変わってくる。
  • あと小難しいことは抜きにしても、見たことや聞いたことのない名作がいっぱい音楽画像付きで紹介されるので、それだけでも楽しい。
  • ジャズ、ヒップホップの講義は大和田先生だったのが興味深かった(たまたま最近楽しみにしているEテレの番組「星野源のおんがくこうろん」にも登場していたから。トシかいせついん……)

中高年の心理臨床(’20)

中高年の心理臨床〔新訂〕 (放送大学教材)

中年期から老年期にかけて位置する人々の心理について、彼らを取り巻く社会的、時代的状況や、社会問題となっているライフイベントなどに焦点を当て、心理臨床的課題を明らかにするとともに実際の支援のあり方について、関連の理論や質的、量的な実証データなどを用いて講ずる。

  • この科目は履修ではなく聴講(テキストだけ購入して講座を視聴のみ)したもの。放送大学の「心理と教育」コースの専門科目である(私が所属しているのは「人間と文化」コース)
  • 自分が中年期に入った(?)というだけでなく、職場の身のまわりでも中高年に特有の悩みについて耳にすることが増え、場合によってはアドバイスや対応に関わることも増えてきているので受講したもの。中高年に関連する様々な課題が集約されていて学びが大きかった
  • 特に心理学の文脈で様々な学説や理論、キーワードを得られたのは良かった。ここまでわかれば専門家への相談なども含めて解像度高く対応できそう
  • 自分にとっては将来的にやってくるだろう老年期の課題を予習するという意味でも良かった。備えよ常に……

来期(4年目前期)の予定

以下を受講予定。仏教は単純に気になっているのと、西洋哲学からすこし離れてみたいという気持ちから。クリティカルシンキングについては先日読んだ哲学思考トレーニングが面白かったので、興味を持ったもの。言語学は、ドメイン駆動設計の文脈で学ぶと面白いという話をどこかで聞いたからである。ちょっと欲張りすぎかもしれない。

これまでの記録

これまで受講した科目

  1. 哲学・思想を今考える(’18):1年目前期
  2. 西洋芸術の歴史と理論(’16):1年目前期
  3. 総合人類学としてのヒト学(’18):1年目前期
  4. 博物館概論(’19):1年目後期
  5. 文学・芸術・武道にみる日本文化(’19):1年目後期
  6. 西洋哲学の起源(’16):1年目後期
  7. 教育心理学特論(’18):1年目後期 ※大学院科目の聴講
  8. 「人新世」時代の文化人類学(’20):2年目前期
  9. 日本美術史の近代とその外部(’18):2年目前期
  10. 現代フランス哲学に学ぶ(’17):2年目前期
  11. 記号論理学('14):2年目後期
  12. 舞台芸術の魅力('17):2年目後期
  13. 西洋音楽史(’21):3年目前期
  14. レジリエンスの諸相(’18):3年目前期
  15. 心理学概論(’18):3年目前期