勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

Amazon Fire HDを中心とした勉強環境 2021

世の中的にはiPadを中心としてモリモリと勉強している人が多そうだけれども、意外とAmazon Fire でも闘えるということを説明する記事。勉強道具は使い倒してナンボだと考えているので安価なFireタブレットをあまり大切にせず使っている。またアプリを中心として「何でもできない」ことをメリットとして考えている。

セールになった時に買うと良い。壊れてもそんなに悲しくない。私は保護フィルムやカバーなどもつけていない。動作がおかしい時は(Prime会員なので)割と手厚いサポートを受けられるのも素晴らしい。

Fire 10 HDで出来ることのまとめ

他にもいろいろ出来ると思うが、自分の使い方はだいたいこんな感じ。FireはゴニョゴニョすればGoogle Playが導入可能だが、不安定になるという説もあるので実施していない(必要もないし)

  • 快適なKindleアプリでの電子書籍の読書
  • 気分転換としてのPrime Videoの視聴(要Prime会員)
  • BGMとしてのPrime Musicの視聴(要Prime会員)
  • BGMとしてのSpotifyの視聴(アプリ使用。フリープランも可)
  • Zoomでのオンライン勉強会への参加(アプリ使用)
  • Youtubeでの各種コンテンツの視聴(アプリ使用)
  • 放送大学のインターネット放送視聴(デフォルトブラウザを利用。要入学)
  • O'REILLYのサブスクで技術書読書(デフォルトブラウザを利用。要O'REILLYサブスク登録 )
  • NHK+でのNHK放送番組の視聴(アプリ使用。要NHK加入)
  • PDFファイルや、PDFで購入できる書籍の読書(アプリはMicrosoft Officeアプリを使用)
  • 学習メモ作成(いろいろあるが、Microsoft OneNoteが安定している印象)
  • インターネットで各種の調べ物(デフォルトブラウザを利用)

というわけで、特殊なカスタマイズをしなくても、けっこう使えている。
FireのデフォルトブラウザはAmazon Silkというあまり有名ではないものだが、実体としてはChromiumらしいので、そんなに困ることはない。Web翻訳機能が無いのはちょっと不便だが、そんなに困っていない(Kindleアプリ内には翻訳機能がある)。

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Fireでのクラウドサービス利用

デフォルトでAmazonの各種サービスが利用できるのだが、他の環境とのやりとりには若干難がある。一方でAmazonApp Storeはマイナーなのか、何かしらの縛りがあるのか、世の中で流行っているアプリは配布されていないことが多い。たとえば

  • Dropbox:非常に古いバージョンが配布されている(Version 170.28。最新は260.2)レビューを見る限り使えなくはなさそうだが
  • Evernote:すでに配布をしていない(過去にDLしている場合は利用できる)

そのような状況だが、現在はMicrosoftはがんばっていて、ちゃんとアプリがアップデートされている。公式にサポートされているのもありがたい。クラウド分野では競合関係だと思うのだが、仲良くやってほしい。

というわけで、クラウドサービスを利用するのであればMicrosoft系ツールを選んでおけば、割と心配なく利用できる。(Microsoft Teamsも利用できるようだ。プライベートでは利用していないのでインストールしていないけれど)

FireでのSNS利用

一応、TwitterFacebookもアプリは存在するが、利用していないのでよくわからないのが正直なところ。ブラウザ経由でアクセスする場合の使用感は特に問題ないようだ。あまりアクセスすることはないのだけれども。

メモ環境としてのFire

iPadではApple Pencilなどを使って紙のノートのように手書き入力したり、オンスクリーンキーボードを利用して快適な文字入力ができるようだ。しかしFireタブレットではそこまで繊細なタッチ入力はできない。しかし、自分はメモ類はそもそも紙のノートに書きつけて、あとで写真を取って保管しておく事が多いのであまり支障はないのだ。オンスクリーンキーボードでの入力は、快適ではないかもしれないが耐えられないほどの問題もない印象(日本語文字変換はあまり賢くない)。

なお、iOSAndroidと違って「音声入力」はデフォルトでは出来ないようだ。これも自分はあまり必要としていないので深掘りはしていないのだけれども。

なお、意外と何でも出来ると言ったものの万能ではない。例えば放送大学については現在問題なく利用できているが、推奨ブラウザにはなっていないので突然利用できなくなる可能性もある。そういったリスクがあることは認識しておくべきだろう。

「プロダクトマネジメントのすべて」をすべて読んだ #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第33回。今回取り上げるのは「プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで」。前回Part.3まで読んだので今回は残りを読んだ感想。

プロダクトマネジメントのすべて」の後半および全体の感想

総論として言えば、非常にコストパフォーマンスの良いテキスト。もちろん多くの情報はネットから取得することも出来るが、断片化しやすい。必要になったときに一冊にまとまっていることの価値は大きいだろう。今後、何度も本書は開くことになるんだろうなぁ~と思いながら読んだのであった。

特に良いと思ったのが

  • 日本のマーケットを意識して書かれていること(洋書にありがちな、不要な情報が無い)
  • バズワードでもあるDXなどを取り上げていないこと
  • アジャイル開発を工程しつつも、あまり意識しない内容になっていること

というところで、要はエンジニア向けのマニアックな内容になっておらず、バランスが良いというのが全体的な感想。普通の人が参加する読書会で読めそう。

前半の中心はフレームワークに基づく構造中心の話だった。ちなみに本書の中では名前がついていなかったが「仮説のミルフィーユ」という呼び方らしい。note.com

では、本書の後半はというと「戦略とスケーリングの話」「組織と教育の話」そして補足的な「基礎知識集」である。
まさにフレームワークを使った実践編のような章であるが、勝手な推測としては著者の及川さんや曽根原さんのノウハウが抽出されて記載されてそうな印象である。
曽根原さんのUdemyのコースは非常に興味深い。いつか受講してみたい。
www.udemy.com

読み終わって考えたこと

本書の最後のページには、この種の書籍によくあるように参考文献ページがあるのだけれども、「おっ」と思ったのはUdemyの講座がいくつか記載されていることだ(著者の一人である曽根原さんの講座)。
www.udemy.com
本書は良質なテキストであると思うのだけれども、やはりとっかかりでしかないというのも確かで、実践と情報収集を繰り返していくべき分野であることは確かなのであろう。
そういえば本書の17章「プロダクトマネージャーのスキルの伸ばし方」では「プロダクトマネージャの1日」がチャート図つきで紹介されている。詳細は原文を参照いただきたいが、

  • 起床8時
  • 9時から業務開始で、1時間はニュースチェックやSlackのキャッチアップ
  • (休憩をはさみつつ)20時半ごろ仕事は終了
  • 22時から23時半までは「自己学習タイム(オンラインコースや海外のオンラインセミナー受講、語学学習、読書、国内や海外のアプリ比較など)」

である。この過ごし方に違和感を持つような人は、なかなか難しいのではないか。

気になること

本書を読み終えて、関連情報をいろいろと調べていたところでひっかかったものに「DIA for PM」がある。
exawizards.com

  • 有償のオンラインアセスメント
  • 本書の著者でもある及川さん、小城さんが開発にかかわっているみたい

うーん、気になるぞ。ゴニョゴニョするか今後考えよう。

さてこれで本書の読了デッドラインも守れた(良かった)。年内あと1冊くらいか。

あたりはすぐにでも読みたい。
あと、ここらへんをチェックしてもいいかも
www.shoeisha.co.jp

『Googleのソフトウェアエンジニアリング』が翻訳されるので過去のメモを整理しておく

Software Engineering at GoogleGoogleのソフトウェアエンジニアリング)が翻訳されるらしい。SRE本にもまさる骨太の論文集だったと思うが、そういえば読んだ時の感想などをちゃんとまとめてなかったので、Twitterからサルベージしておく。

15章までは感想をコメントしていたけど、16章以降をちゃんと読んでいるのかはちょっと心配(16章以降は「Part. IV Tools」なのでさらっと読み流したのかもしれない)。訳書が出るのなら、もういちど読み直そうかなぁ

システムの「完成した機能の64%は使われない」という話はあまり正しくない

主にアジャイル界隈で目にするスライドの一つが「完成した機能の64%は使われない」である。これはXP2002カンファレンスでStandish Group会長のJim Johnsonが発表した内容に含まれていたという。

しかし、この情報はどれほど正しいのだろうか。

というわけで調べてみたら、あっさりと正解にたどり着いた。
www.mountaingoatsoftware.com

なんと、アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~著者のマイク・コーンがStandish Groupを凸して真相を突き止めているのである。強い。強すぎる。
詳細は上記記事を見ていただくとして実際のところは
「このデータはソフトウェア『プロダクト』ではなく社内利用向けの4つのシステムを分析したものにすぎない」
というのが真相である。別にエンタープライズソフトウェア全般を分析して出した平均値などではないのだ。

アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~

もちろん、「そんなの無くて良いでしょ、というような思いつきの機能要求」とか「とりあえず途中まで作ってみてから考え直しませんか。たぶんいらんからその機能」みたいな話は往々にして存在する。開発者としては、役に立つ、良いソフトウェアを作りたいという気持ちも強い。それはわかるが、由来のよくわからないデータを持ち出して「一般的に完成した機能の64%は使われないんですよ」と脅すのは、フェアではないなぁと思ったのであった。


agnozingdays.hatenablog.com

計算者、計算手、コンピューター

計算者、計算手、コンピューターはどれも同じ意味である。飯のタネにしている電子計算機の祖先について最近いろいろ興味を持っている。

計算手 - Wikipedia
計算手(けいさんしゅ、英:computer, human computer)とは、電子計算機が実用化される以前の時代において、研究機関や企業などで数学的な計算を担当していた人間のことである。現在では「コンピュータ」と言えば電子計算機を指すが、当時は "computer" という語の成り立ちが表す通り「計算する人間」のことであった。

興味をもったきっかけは、SF小説「宇宙へ」

宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF) 宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)

この小説は歴史改変モノSF小説として超オススメなのだけれども、計算者が大活躍するという意味で勉強にもなる。主人公がまさに「計算者」である。

天文学とロケット工学の分野でおおいに貢献した彼女たちは、これらに関する計算を、鉛筆と計算尺を用い、手計算で行なっていた。計算機がものになるずっと前からだ。計算機なくして、人類は月にいくことができただろうか? 現実世界で計算機が実用になる以前、これらの計算はもっぱら女性たちが行なっていた。計算機のほうが、たしかに計算速度は速かった──使いものになるようになってからは。しかし、計算機には数式を組むことができなかった。宇宙時代の黎明期において、数式は人の手で書かれていたのである。
宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)  「歴史ノート」より

計算尺は親父は使っていたが、自分は触ったこともない。

「Hidden Figures」

次はこの映画である。邦訳タイトルがイマイチすぎるが、見てよかった。エンジニア必見映画ではなかろうか。またもや主人公は計算者。
ドリーム (字幕版)

なおサイドストーリーとしてIBMFORTRANの話も出てきてこっちも興味深かった。

「FOR ALL MANKIND」

そして現在視聴中のこのドラマも素晴らしいのである。こちらは群像劇だが、女性計算者も主要な登場人物として出てくる。
tv.apple.com

さらに勉強予定

計算手に関する関連書籍は「宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)」のあとがきが詳しく、ここで紹介されている書籍はぜひ読んでみたい。

『ドリーム』をすでに見た人も、この映画の原作はぜひ買って読んでほしい。女性の計算者たちがじっさいに行なっていたことが、気が遠くなるほど詳細に書いてあるから。同様に、『ロケットガールの誕生』では、黎明期からこちらのジェット推進研究所において、女性がどのようにかかわっていたかが描かれている。計算部門に男性を採用しないという方針はほんとうにあったのだ。
宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)  「歴史ノート」より

「プロダクトマネジメントのすべて」前半を読んだ #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第32回。今回取り上げるのは「プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで」。(電子書籍なので実感がないけど)分厚い本なので今回は「Part.1 プロダクトの成功」から「Part.3 ステークホルダーをまとめ、プロダクトチームを率いる」まで。残りは次の2週で読む予定。

プロダクトマネジメントのすべて」の前半の感想

タイトル通りだが、プロダクトマネジメントに関する全方位的なガイドという位置付けになっている。
類書で言えば

などもあるが、本書はまず「アジャイル開発プロセス」に特化していない(推奨はしている)点と、日本企業における展開に重点が置かれている点が大きな違いではないかと思う。

著者の一人の及川さんといえば前著「ソフトウェア・ファースト」が有名だが、同書およびその前後のインタビューやプレゼンテーションを思い起こすと、「SIer主導のプロジェクトマネジメントから、ユーザ主導のプロダクトマネジメントに切り替えていくことを通じて、日本を良くす」的な意気込みが感じられる。そういう意味で、熱量のこもった良書だと思う。

また本書は当然プロダクトマネジメントについて書かれた本ではあるが、その要素の多くはリーダーシップ論でもある。そう言うい意味ではプロダクト開発に関わっていないエンジニアにとっても得るものが多いだろう、というのが前半部を読んだ感想。

各PARTの感想

PART 1.プロダクトの成功

プロダクトマネジメントに関する考え方およびフレームワークに関する説明。このフレームワークが著者らのオリジナルかどうかはちょっとわからないのだけれども、シンプルで見通しが良く、非常に使い勝手の良いものだと思った。

PART 2.プロダクトを育てる

Part.1で紹介されたフレームワークに乗っ取って、細かいテクニックを説明していくパートである。説明が丁寧であり、ケーススタディも付属するので初学者は大変学びやすい印象。ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスなど、それ単体で一冊の本が出版されているようなテクニックも平易に解説されている。

PART 3.ステークホルダーをまとめ、プロダクトチームを率いる

うってかわって、チームをリードするためのテクニックに関するパート。一方で、国内ソフトウェア開発の現場で陥りがちな諸問題についてピックアップされており、このパートだけ切り出して社内勉強会をやっても良さそうな内容。

というわけで前半はなかなか楽しく読むことができた。後半を読むのも楽しみだ。

おっさんエンジニアの放送大学教養学部に入学記録3(2年目前期終了)

2020年4月から放送大学教養学部「人間と文化コース」に入学して、これまで勉強してこなかった人文系の勉強を始めている。2年目前期が終わったので感想などをまとめてみた。

2年目前期に履修(一部は聴講)した科目

「人新世」時代の文化人類学

「人新世」時代の文化人類学 (放送大学教材)

  • 素晴らしかった。放送大学に入らなくてもBS放送で授業は視聴できるので興味があったら見て欲しい。NHKスペシャルのシリーズを見ているような濃度で、文化人類学という眼鏡を通じた現代社会の問題に触れられる講義である。取材映像も多数あり退屈もしない。講師陣も豪華。
  • 内容はバラエティに富んでいて退屈しないのだけれども、個人的には第7回 エイジングの人類学と第8回 医療とケアの民族史が興味深かった。

youtu.be

日本美術史の近代とその外部

日本美術史の近代とその外部 (放送大学教材)

  • 深かった。自分は知的好奇心を存分に満たすことができたけれど、ある程度美術系の予備知識が無いと難しい、なんというか「大学の授業らしい」講義だった。
  • 本講義に限らず放送大学で科目を履修すると中間テストと期末テストがあり成績がつくのだけれども、この講義は他の講義に比べてダントツに難しかった。なぜなら、独自のレポートを提出する課題があるからである。なお提出後、先生からしっかりとした講評が届くのも、とても大学っぽい。

youtu.be

現代フランス哲学に学ぶ

現代フランス哲学に学ぶ (放送大学教材)

  • 本科目は正式には履修しなかった(テキストを購入して講義のみを視聴)。期間内に完了できる自信がなかったのと、ラジオ講義(映像がない)であることが理由。
  • 自分が放送大学に入学した動機が哲学への興味だったため、本講義もだいぶ楽しみにしていたのだが・・・非常にハードルが高かった!難しい!
  • フランス哲学を学ぶ入口には立てた感がある(とりあえず用語に触れたというレベルで)。いろいろと学びなおしてから再挑戦しようと思った。

2年目後期の予定

以下を履修している。

  • 記号論理学 (放送大学教材)
    • 自分の所属する「人間と文化コース」ではない他科の科目なんだけど、他に論理学の講義が無いので取ってみた。哲学の一種として学びたいのです
  • 舞台芸術の魅力 (放送大学教材)
    • 芸術系の講義も聞きたかったから。昨年受講した「西洋芸術の歴史と理論」が素晴らしかった青山先生なので期待でいっぱい

あともう1科目くらい聴講しようと思っているけど、いろいろ悩んでいる。ちょっと大学数学をやりなおしたい気持ちが沸き上がってきたので数学系をやるのも面白そうだと思っている。