いつか読もうと思っていた名著「ソフトウェア要求 第3版」を読んでゐる(例によってKindleのセールで購入。なお現在はほぼ定価に戻ってるので注意) 以前にこのブログで言及したソフトウェア顧客の権利と義務についての章を読んだのでその雑感と関連思考について。オチはない。
「ソフトウェア要求第3版」では
以前に記事で引用したソフトウェア顧客の要求に関する権利宣言と責任宣言を、改めて原点の「ソフトウェア要求第3版」で確認した。第2版とおそらく変化していないと思うのだけれども確認はしていない。
ソフトウェア顧客の要求に関する権利宣言
もっともな事なのだけれども、この形では浸透していないなぁというのが最初の印象。
また(読んでいる途中だけれども)本書「ソフトウェア要求 第3版」は米国由来ということもある。発注者と受注者に分かれる本邦の一般的な受託開発には即していないという特性あると思う。
IPA「超上流から攻めるIT化の原理原則」というものもあってだな
そういえば、IPA「超上流から攻めるIT化の原理原則」というものがあって(良い資料なのだけれどもこちらも浸透していない)、そこに同じような記載があったような気がして確認してみた。この原理原則は17か条あるのだけれども、それぞれに「行動規範」というものがついていて、かなり前述の権利と義務に似通っている印象。
つまみ食い的にピックアップするとこんな感じである。
- 発注者・受注者は、お互いの責任、義務、想いを知る。
- 発注者は受注者との役割分担を明確にし、プロジェクトに積極的に参画する。
- 発注側業務部門も、“システム開発”を理解する。
- 発注者・受注者は、合意プロセスと承認ルールを明確にし、それに基づいて行動する。
- 受注者は、良否判断を仰ぎやすい提案を心がける。
- 発注者は、情報システム構築の目的を明確にする。
- 発注者は、情報システム構築の方針・狙いをステークホルダに周知徹底する。
- 受注者は、方針・狙いを理解して、情報システムを構築する。
- 発注者は、「我々が要件を決め、責任を持つ」という意識を社内に浸透させる。
- 発注者は、業務部門と IT 部門が、二人三脚で要件定義を進める。
- 受注者は、発注者の側に立った支援を提供する。
- 発注者は、受注者に要件を正しく説明する。
- 受注者は、要件を理解して、理解した内容を発注者に確認する。
発注者とか受注者という記述が非常に日本的というかSIer的なのだけれども、素晴らしく現実にフィットしているような気がする。特にソフトウェア開発の専門家ではない経営層や業務担当者にはこれくらいのほうがわかりやすいのだろう。
「どっちがコンサルしているのかわからない」という顧客の発言
以前に経験したプロジェクトで、外部から招聘したビジネスアナリストに対してお客様が「どっちがコンサルしているのかわからない」という苦言をしていたことを思い出した。
- 高いカネを支払っているのに、(ともすれば自分よりも高給取りな)コンサルタントに業務を教育しなければいけないことに納得がいかない
- 教育している期間に対してもコストを支払うことに対して違和感がある
という意味だと思っている。
もちろんコンサルタントがいわゆるSME(Subject Matter Expert:特定領域の専門家)というロールを担当しているのであれば、あらかじめ業務知識は持っているべきだし、企業の方言学習以外を必要としていたらボッタクリの疑いはある。
ただ、ビジネスアナリストというロールであれば前述の「義務」ではないが、その分析能力を発揮するために顧客側が「教育する義務を負う」のがあるべき姿のような気がする。ただ、相応の分析能力は有しているべきであって、顧客から根掘り葉掘り聞いたことをそのまま分析せずに大量に文書化するような役割は言語道断だと思うけれども。