読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第36回。常時、けっこうな量の積読があるのだけれども、知り合いと読書期日を約束することによって消化が捗るという仕組み。ここ最近はこんな本を読んでいる。
- #35 「リーン・エンタープライズ」後半も読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経
- #34 「リーン・エンタープライズ」まず前半を読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経
- #33 「プロダクトマネジメントのすべて」をすべて読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経
- #32 「プロダクトマネジメントのすべて」前半を読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経
- #31 「実践 CSIRTプレイブック」を読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経
今年最初のお題は「恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」である。
久しぶりに技術から少し離れた距離感の本だ。
「恐れのない組織」全体に関する感想
あまりに有名すぎる「チームが機能するとはどういうことか──「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ」(この本も素晴らしい)の続編的な位置づけの本である。というかチームワークについて引き続き研究している中で著者自身が心理的安全性の重要性に気づき、方向性が変わったということだそうである。
とりあえず、私はもともとは心理的安全性を研究しようと思ったわけではなく、むしろチームワークとそれが失敗とどう関係するかを研究するつもりだったとだけ言っておこう。変わりゆく世界で組織が学習できるようになるためには、人々がどのように協働するかが重要な要素になると私は考えていた。そこへ心理的安全性が──後述するとおり、直観的なひらめきとして──不意に現れ、データにあったいくつかの不可解な結果を解き明かしてくれた。
恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす はじめに、より
昨今、山のように「心理的安全性」の情報が溢れているが、本書がもっとも網羅的で本質的な議論を取り上げていると思う。おそらく今後も様々なビジネス書に引用されまくる気がするので、早めに読んでおくのが良さそう。必読本という感じ。
それは、仲良しグループを作るための考え方ではない、ということについて
心理的安全性の取り扱いはもともと少し難しいと思っていた。特に組織のHR部門などが推進していたりすると、「組織がぬるま湯になるのでは」「仲良しグループで高い成果は達成できるのか」といった反論も耳にする。このあたりが本書で解決すると良いと思っていたのだが、ある程度はスッキリすることができた。
ただ、明記はされていないが、本書は欧米のジョブ型雇用を前提に書かれているようにも思える。日本の企業はメンバーシップ型の雇用形態である。仕事に対して適した人を雇用するのではなく、雇用した人に合わせて仕事を割り当てるという特性の違いがある。その上で、仕事に対する責任の考え方が異なるという点は差っ引いて考えねばならないだろう。(日本の雇用周りの論点は、「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)」がとても面白いのでお勧め)このあたりに、心理的安全性との不協和音があると考えているのだが考察はまた別の機会に。
特に興味深いとおもった箇所の覚え書き
以下は、あとで自分で思い出すためのメモでもある。
第1章 土台
心理的安全性についての誤解
それぞれの理由については後続の章で考えていくという体裁となっているが、よくある誤解が前の方の章で取り上げられているのは良いガイドだと思った。ここで紹介されている誤解は4つである。
心理的安全性とは、高い基準も納期も守る必要のない「勝手気ままな」環境のことではない。職場で「気楽に過ごす」という意味では、決してないのだ。このことは肝に銘じておいたほうがいい。
心理的安全性だけでは十分ではない
はい。その通り
第8章 次に何が起こるのか
心理的安全性に関する、よくある質問
終章後半であるが、ふたたび第1章とは別の文脈でFAQが書かれていて、学びが深い。ここでも紹介されている質問を列挙しておこう。本書を読めばそれぞれに関する著者の見解が書かれている。
- 心理的安全性が過度になることはないか
- 職場が心理的に安全になると、時間がかかりすぎてしまうのではないか
- あなたは心理的に安全な職場を推奨している。それは、あらゆることについて透明であるべきだという意味か
- 職場で心理的安全性をつくることには大賛成だが、私は上司ではない。私にできることが何かあるだろうか
- 心理的安全性とダイバーシティ、インクルージョン、ビロンギングはどのような関係にあるのか
- (ビロンギングとは、自分らしさを発揮しながら組織に関われる心地よさ、ということだ。知らなかったー)
- 心理的安全性は内部告発につながるものか
- 業績はよいが、経営者がトップダウン型の横柄な独裁者で、誰の言葉にも耳を傾けず、従業員を泣かせることもある企業はどうなのか
- なんとかしてくれ!同僚が職場で本音を言うのでイライラする!
- アドバイスを請う!本当の考えを職場で言うようにしたら、みんなに嫌われてしまった(もう誰にも好かれなくなってしまった)!
- 上司が変われず変わる気もない場合、その部下である人々にアドバイスしてほしい
- 心理的安全性を作るリーダーには、誰でもなれるのか
- 異文化間の差についてはどうなのか。中国では心理的安全性をつくることは可能なのか。日本ではどうか。【任意の国名】ではどうか。
さて次の本は「チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計」?