読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第35回。今回取り上げるのは前回に引き続き「リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES)」である。前回7章までを読んだので、今回は8章から最後までを読んだ感想やふりかえりなどを書いている。
なお本書は米O'reillyのサブスクに訳書が含まれているので、会員であればすぐに読むことができる。
「リーン・エンタープライズ」全体に関する感想
ひとことで言うと、非常に勉強になったし、刺激を受けた。
- 現在主流のアジャイル手法「スクラム」とは別の視点として「リーン/TPS」で物事を見ることが出来るという意味で非常に有意義
- 中大規模企業の変革手法に関する言及が興味深い。例えば以下の章はいろいろとヒントを得ることが出来た
- ガバナンス、リスク、コンプライアンスの観点に関する考察(12章)
- 財務管理、予算策定に関する考察(13章)
- 競争優位性に関する考察(14章)などなど
というわけで個人的にはとってもお得だった一冊。ただし、あまり若い方にはオススメできないかもしれない。マネージャー的役割が大きい方のほうが学びは深そう。
特に興味深いと感じた箇所の紹介
以下、自分が興味を持った箇所と調べたことについてのメモである。各章何かしら発見があるのが楽しい。
第Ⅲ部 活用
10章 ミッションコマンドを実行する
わかっているけど実際には実現できないミッションコマンドの話である。とはいえ、うまくいっている企業の戦略は参考になる。
本当に分散化した組織は、補完性原則に従います。つまり、基本的に決定というものは、その決定によって直接影響を受ける人たちが下すべきなのです。官僚組織の上位レベルは、下位レベルでは効果的に行えないタスクのみを実行すべきです。つまり、上位レベルは下位レベルを「補完」すべきということです
リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES)
第Ⅳ部 変革
11章 イノベーション文化を育てる
というのは冗談としても、以下の示唆はとても重要だと思う
文化には実体がありませんが、計測することは可能です。文化の計測に関する研究は数多く存在します。あらゆる方法論はなんらかのモデルにもとづいており、モデルにはすべて制限があります。それでもなお、こうした計測は重要です。なぜなら、文化を目に見える形にして、そこに注意を向けることができるからです。
リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES)
12章 GRCにリーン思考を取り入れる
GRCはガバナンス、リスク、コンプライアンスの略である。特に中大規模企業にてリーンやアジャイルの概念を取り込んだ時に悩ましい要素だが、わりとバッサリと論じていて軽快。
ごもっとも……ITIL v4もその方向性なんだよなぁ……
13章 財務管理を進化させて製品イノベーションを促進する
とりあえず以下を読むべきということがわかった(こんなのばっかり)
14章 ITを競争優位にする
なぜ多くの企業はITを競争優位性に出来ないのか、という問題意識に関する章であり、それぞれのトピックがだいぶ興味深い。
15章 今いる場所から始めよう
終章。ちなみに一つの事例としてGDSが紹介されているが、現時点では状況が変わっているという話を別の本で読んだので、紹介しておこう。
www.iais.or.jp
一方で近年は、それまでの成功とは裏腹に、行政サービスのデジタル化推進の動きには陰りが見え始めており、国連が発表する電子政府ランキングでも、イギリスは長らくトップを占めてきたが、"#"#年%月のランキングでは順位を7位にまで落とし、GDS創設を支えたキーパーソンも次々と運営から離脱している。
ハンドブック「GDX:行政府における理念と実践」 より
なかなかに難しい。
最後にちょっとひっかかるような点もあったけれども、良い学びの書であった。紹介された本のうち、特にビジネス系は押さえておきたい。