勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

「ふりかえりガイドブック」を読んだ #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第28回。さて、今回選んだタイトルは「アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット」である。ふりかえりを始めてみたい人が最初に読むのにはおすすめ。

個人的におすすめな「ふりかえり」の勉強法

身も蓋もないのだけれども「ふりかえり」を習得する一番良い方法は、上手な「ふりかえり」を体験することだと思っている。自分は10年くらい前に様々な勉強会コミュニティで、現在ではレジェンド級となった巨匠の皆さんが参加する「ふりかえり」等に参加したり目の前で観察する機会があり、強く影響を受けている。ただ、残念ながら現在、同じような体験ができる場所が世の中にあるのかわからないのである。

一番最悪なのが、手探りで「それっぽい」事をやっているチームを参考にすることだ。もちろん、手探りをすることは大切だし、否定はしない。だけれども「ふりかえり」という実は結構難しいアクティビティについては、うまいチームと下手なチームの差が激しいので、本当に注意したほうがいいい。

もし身近なところに信頼できる見学先が無いのであれば……本書「アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット」を読むと良いと思う。

アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット

というわけで本書は文字通りの、「ふりかえり」という実は結構難しいアクティビティに関するかなりオススメのガイドだ。当面、「ふりかえり」に相談を受けたら本書を一読することをお勧めするつもり。とくに本書で良いと思う点は次のようなところだ。

  • イラストも豊富で(というか一部はコミック仕立てで)読みやすい。けれど、煩いほどではない。ちょうど良いバランス
  • コミュニティで見聞きするような、言語化しにくいアドバイスやTIPSがかなり上手に盛り込まれている
  • 小難しい理論に走っていない。パターン言語がどうこう、とかそういう話が入っていない
  • 小難しい心理学などを紹介していない。

というわけでだいぶ良かったのだけれども、一方である程度の学習者、情報収集をしている人には退屈かもしれない。ただまぁ、上級者の人は常に後進に良いアドバイスをし続ける責務があるはずなので、良いアドバイスをするための練習と思って読めばいいだろう。

ちょっと残念だったところ

読み終えて、ちょっと残念だと思ったことがいくつかある。あくまで個人の感想です。

  • アジャイルに全振りしているところ。別に「ふりかえり」はアジャイル限定というわけでもないのでそこまで振り切る必要があったのだろうか
  • アジャイルに全振りしている一方でSREやDevOpsの文脈が入っていないので、ポストモーテムについての言及がない
  • カースの最優先事項」は取り上げておいてほしかった
  • 手法09「5つのなぜ」はもうちょっと慎重に扱ったほうが良かった。最近のソフトウェア開発は複雑性が高いので実はこういった根本原因分析はうまく適合できないと思っているし、そういった言及がどこかでもあったと思う(思い出せぬ)。ヒューマンエラーに関する議論に陥る懸念があるので、自分はこの手法は最近使わないようにしている

追記。Twitterで著者コメントいただいていました