勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

「Team Topologies」後半読んだ #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第38回。常時、けっこうな量の積読があるのだけれども、知り合いと読書期日を約束することによって消化が捗るという仕組み。ここ最近はこんな本を読んでいる。

今回のお題は先週に引き続きの「チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計」である。
チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計
Kindle版を読んでいるので分厚さが実感できないが、2スプリントに分割。前回Part.2までを読んだので、今回はPart.3以降が対象である。

「チームトポロジー」通読した感想

前回の感想でもこう書いたけれど

非常に良い本だと思うし、本書で使われた用語はしばらく業界内で通用しそうな気がする。中堅以上の、ソフトウェア開発のチームリード的立場の人は必読ではないだろうか。

改めて、中堅以上のソフトウェア開発のチームリード的立場の人、PM、アーキテクト、あとソフトウェア開発組織をマネジメントする人にとっては必読な本だと思う。少なくとも私は、本書を読んだ人とチーム設計の議論がしたい。

一方で、日本の一般的なソフトウェア開発チームの文脈を考えると次のような注意事項があるだろう。

  • 本書が想定しているのは現代的なプロダクト企業、チームである。受託開発プロジェクトで本書をストレートに適用することはできない(もちろん参考にすべきアイデアはあるが)
  • ビジネスとデベロッパーが分断されているような組織構造も想定されていない(統合されている前提のように見える)。「ユーザー部」という単語を使っているチームに本書の内容はそのまま適用できない
  • つまり、一般的なお前には10年早い(死)

というわけで、本書には高い壁があるのだけれども、それを乗り越えて本書が提示する概念/パターンは重要だと思う。本書で紹介されている概念やパターン(本書で言うところのトポロジー)をベースに、自分の組織の現状を描いてみることから始めるのが良いだろう。自分はいろいろ描いてみて、いくつか発見もあった。

「チームトポロジー」後半(Part.3~)の感想

さて本書の後半は「Part.3 イノベーションと高速なデリバリーのためにチームインタラクションを進化させる」である。
このパートは3章で構成されているが、最後の章は本書全体のまとめなので、実質2章である。ここでは、

  • チーム間のインタラクションのパターン(7章 チームインタラクションモード)
  • チーム構造を進化させる戦略(8章 組織的センシングでチーム構造を進化させる)

が語られている。

定義される3つのインタラクションパターンは非常に有用な整理だと思っている(コラボレーション、XaaS、ファシリテーション)。チーム構造を分析設計する際に活用しやすく、独立している。
そしてチームの進化は、まさに逆コンウェイ戦略の要点であると思う。最初から最適なチーム構造を設計実装できることは無いという制約を踏まえて、どう発展させていくかの話は非常に参考になった。

おすすめ復習コンテンツ

というわけで本書を手に取る事をオススメする一方で、読むかどうか悩んでいる方、もしくは読んだ後に復習したい人向けのコンテンツをいろいろ発掘できたので紹介しておく。でも以下を見て読んだ気にはならないほうが良さそう。

Quick Reference Card(QRD)

本書で書かれている内容が「Quick Reference Card(QRD)」としてまとめられているのだけれども、以下のページで日本語訳されているので、ざっくりどんな本か知りたい場合は参照すると良さそう。
scrapbox.io

fukabori.fm

個人的には、読んだ後に聞くのがお勧め。

ちなみにmiholovesqさんが以下のようなこと(不正確かもしれません)を言っていたが、強く共感。

  • Team Topologiesの前提には、アジャイル的文脈の小規模チームと、DevOps(書籍「LeanとDevOpsの科学(Accelerate)」が紹介しているもの)がある
  • エンジニア的資質や上記背景を知らない人が本書を読んで、イキナリ組織設計に走るべきではない

Forkwellさんの勉強会「チームトポロジーを成功させる実践方法の探求 - Team Topologies Study」のアーカイブ

もしかしたら公開期間に制限があるかも……
www.youtube.com

上記勉強会で説明された、訳者のひとりである吉羽さんの資料はこちら
www.ryuzee.com

上記勉強会で説明された、kameikeさんの資料はこちら
timee.notion.site

というわけで、たいへんに勉強になった。さて、次はなにを読みますかね