勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

「エッセンシャルスクラム」後半も読んだ #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第25回。今回選んだタイトルは「エッセンシャル スクラム」である。ちょっと2週間で読むには分厚いので前後編でお届けする。後編では「第Ⅲ部(プランニング)、第Ⅳ部(スプリント)」を読んでいる。前編はこちら:「エッセンシャルスクラム」前半を読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経

エッセンシャル スクラム

エッセンシャル スクラム

全体的感想:エッセンシャルスクラムは、いったんスクラム実践してから読むのがよい本

いろいろな場所で何度か聞いた「事業会社でスクラムを導入するよい方法」というものがある(うろ覚え)

  1. まず自分たちでやってみる
  2. うまくいかない状態を認識する
  3. 外部からアジャイルコーチを招聘して、うまくいかない課題を解決する
  4. うまくいくようになったら、外部コーチ卒業

読み終わってみると、本書はこのステップ3を代替するような位置づけであることがわかる。つまり

  • スクラムやる前に読む本ではない(いろいろな課題意識を持っていないと深みが出ない)
  • 自分たちで課題について検討した後に、答え合わせや追加のアドバイスが得られるような本だ

というのが読み終えた段階での感想だ。

後半部分《第Ⅲ部(プランニング)、第Ⅳ部(スプリント)》の感想

今回読んだ後半部分で、特に興味深かった点を中心に抜粋する

スクラムでの開発は、事前にプランニングをせずに始めるものだという声がある。とりあえず最初のスプリントを開始して、詳細は開発を進めながら詰めていくというのだ。だがこれは間違いだ。スクラムでも、事前に計画を作っている。実際に、さまざまな詳細度で何回も計画を作るのだ。中には、スクラムではあまりプランニングに重きを置いていないのではと思う人もいるかもしれない。というのも、スクラムでは必要に応じてジャストインタイムでプランニングをすることが多く、事前にきっちりと計画を作ってしまうことがないからだ。しかし、私の経験上、スクラムでの開発のほうが伝統的な開発よりもプランニングに時間を割いている。これは、皆さんの感覚とは少し違うかもしれない。

  • 第23章 未来へ
    • 終章であり、本書全般を踏まえたうえで今後の発展について書かれた章である。良いことがたくさん書かれている。

大切なのは、スクラムの適応やスクラムへの移行について完成の定義はないということだ。CMMIのように、レベル5に到達することが目的であるようなアジャイル成熟モデルは存在しないのだ。

おまけ:Succeeding with Agileについて調べてみた

  • 訳書は無いようだ
  • 2013年前後でアジャイルコミュニティで読書会と翻訳が行われていたようだが、内容に関して公開されてはいないようである
  • 名著と思っている「アジャイルな見積もりと計画づくり」著者のMike Cohnさんの2009年の本
  • 序文によれば、本書はアジャイル開発プロジェクトにおける「ハドソン湾スタート」に該当するのだそうだ(よい表現だ)
    • ハドソン湾スタート」は、300年前、カナダのハドソンズ・ベイ・カンパニーが行っていた風習に由来する。同社は毛皮貿易業者に遠征のための物資を供給していたが、必要なものを忘れていないか確認するためにハドソン湾付近で一度野営させていたそうである(この表現は他の技術書でも見たことがあるな)
  • 目次を見た感じだと「どうやってスクラム開発を始めるのか」「始めた後によくある課題とその対応(例えば抵抗とか)」「さらに発展するには」といった事が書かれてそうな印象

ちょっと興味深いけれど、すでに本書を読んでいるわけなので読まないかなぁ(Mike Cohnさんが書いているという点では、いろいろと鋭い示唆が得られそうなんだけれども)

さて、次は何を読みましょうかね・・・