読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第25回。今回選んだタイトルは「エッセンシャル スクラム」である。ちょっと2週間で読むには分厚いので前後編でお届けする。後編では「第Ⅲ部(プランニング)、第Ⅳ部(スプリント)」を読んでいる。前編はこちら:「エッセンシャルスクラム」前半を読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経
- 作者:Kenneth S. Rubin
- 発売日: 2014/08/01
- メディア: Kindle版
全体的感想:エッセンシャルスクラムは、いったんスクラム実践してから読むのがよい本
いろいろな場所で何度か聞いた「事業会社でスクラムを導入するよい方法」というものがある(うろ覚え)
- まず自分たちでやってみる
- うまくいかない状態を認識する
- 外部からアジャイルコーチを招聘して、うまくいかない課題を解決する
- うまくいくようになったら、外部コーチ卒業
読み終わってみると、本書はこのステップ3を代替するような位置づけであることがわかる。つまり
というのが読み終えた段階での感想だ。
後半部分《第Ⅲ部(プランニング)、第Ⅳ部(スプリント)》の感想
今回読んだ後半部分で、特に興味深かった点を中心に抜粋する
- 第14章 スクラムのプランニングの原則
- 第15章 さまざまなレベルのプランニング
- アジャイル開発プロセスにおける見積りと計画という話については、「アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~」という名著があるのだけれども、本書においてはもう少し戦略面でプランニングについて語られている点が素晴らしい。本書ではここだけ、スクラムのフレームワークを逸脱して「どのような計画が必要か」まで踏み込んで記載されている。
- 具体的にはスクラムには含まれていない「ポートフォリオプランニング」「プロダクトプランニング」「リリースプランニング」が該当する。私の知る限りこれらの計画は結局必要なのに、スクラムでは言及されていないので結局困るのだ(そして結局悩みながら作る)。
- また第14章では対比されがちな、「計画駆動(ウォーターフォール)」と「アジャイル」の意外な勘違いについて改めて気づかせてくれる
スクラムでの開発は、事前にプランニングをせずに始めるものだという声がある。とりあえず最初のスプリントを開始して、詳細は開発を進めながら詰めていくというのだ。だがこれは間違いだ。スクラムでも、事前に計画を作っている。実際に、さまざまな詳細度で何回も計画を作るのだ。中には、スクラムではあまりプランニングに重きを置いていないのではと思う人もいるかもしれない。というのも、スクラムでは必要に応じてジャストインタイムでプランニングをすることが多く、事前にきっちりと計画を作ってしまうことがないからだ。しかし、私の経験上、スクラムでの開発のほうが伝統的な開発よりもプランニングに時間を割いている。これは、皆さんの感覚とは少し違うかもしれない。
- エッセンシャル スクラム、第14章 スクラムのプランニングの原則
- 第23章 未来へ
- 終章であり、本書全般を踏まえたうえで今後の発展について書かれた章である。良いことがたくさん書かれている。
大切なのは、スクラムの適応やスクラムへの移行について完成の定義はないということだ。CMMIのように、レベル5に到達することが目的であるようなアジャイル成熟モデルは存在しないのだ。
- エッセンシャル スクラム、第23章 未来へ
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- ちょっとおやっと思ったのは、ここで何度か取り上げられている「Succeeding with Agile: Software Development Using Scrum (Addison-Wesley Signature Series (Cohn)) (English Edition)」という本である。これは、どうなんだろう。
おまけ:Succeeding with Agileについて調べてみた
- 訳書は無いようだ
- 2013年前後でアジャイルコミュニティで読書会と翻訳が行われていたようだが、内容に関して公開されてはいないようである
- 名著と思っている「アジャイルな見積もりと計画づくり」著者のMike Cohnさんの2009年の本
- 序文によれば、本書はアジャイル開発プロジェクトにおける「ハドソン湾スタート」に該当するのだそうだ(よい表現だ)
- 目次を見た感じだと「どうやってスクラム開発を始めるのか」「始めた後によくある課題とその対応(例えば抵抗とか)」「さらに発展するには」といった事が書かれてそうな印象
ちょっと興味深いけれど、すでに本書を読んでいるわけなので読まないかなぁ(Mike Cohnさんが書いているという点では、いろいろと鋭い示唆が得られそうなんだけれども)
さて、次は何を読みましょうかね・・・