勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

モダン・ソフトウェアエンジニアリングの後半も読んだ #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第19回。今回は前回に引き続きの「モダン・ソフトウェアエンジニアリング」後半戦である。分厚いので前後編に割っていて、今回は「第Ⅲ部 プラクティスを使った小規模開発」と「第Ⅳ部 大規模で複雑な開発」および付録までを読んでいる。

通読しての総評

前半を読んだ時点での感想は以下のようなものだったのだけれども

  • 私は非常に楽しんで読んでいる。ただし万人向きではない。誰にでもオススメできる本ではない。
  • ソフトウェア開発における業界、分野的な問題点に鋭く切り込んでいることは確かだし、その点は非常に興味深い(時折差し挟まれる業界ディスが楽しい!)
  • 主題の(Essenceという名前の)方法論そのものについては本書では説明されていない。活用方法を中心に触れられている

とにかく、いろんな意味で難しい本です
モダン・ソフトウェアエンジニアリングの前半を読んだ #デッドライン読書会 - 勘と経験と読経

後半を読んで特に評価は変わらず。著者の鋭い分析、ソフトウェア開発の諸問題に対する問題提起などは非常に興味深い。
しかし本書で提唱されている手法についてはなかなか普及は難しそうな印象。使いどころが難しすぎる。

しかし、良い事がいっぱい書いてある本でもあるのだ

さて、この2週間で本書の後半を読んだわけなのだけれども、こんな内容になっている。

  • 「第Ⅲ部 プラクティスを使った小規模開発」
    • Essence手法によって再構築された「スクラム」「ユーザーストーリー」「ユースケース」「マイクロサービス」のプラクティスの適用について書かれている。
    • けっこうキツイというか、Essence化(エッセンシャル化)されたからといって各プラクティスの内容は基本的に変わらないし、わかりやすくもなっていない!
    • とはいえ、Essenceの立場で各プラクティスの課題や問題点なども論評されているので、むしろそこが興味深かった。
  • 「第Ⅳ部 大規模で複雑な開発」
    • さらに拡張して大規模開発や組織にEssence手法を適用させる方法について語られている。
    • 第Ⅳ部は楽しめた。結局のところEssenceでなくとも、何らかの手法や方法論をスケールさせるという意味では(Essence部分を差し引いても)示唆の多い内容だからだ

大きな組織にはさまざまな種類の開発がある。たとえば、新規開発、レガシーマイグレーション、ビジネスプロセスリエンジニアリング、探索的開発、コア機能の強化、モバイル開発。
他にもまだあるだろう。こうした開発すべてに有効な手法が存在するだろうか。絶対にない! 組織が合意したプラクティスは永久に機能し続けるだろうか。絶対にない! この業界は進化を続けており、新しい知識や技術が常に登場している。我々は静的な世界に生きているわけではない。世界は極めて動的である。

モダン・ソフトウェアエンジニアリング 第22章 さまざまな種類の開発

そして、ウォーターフォール的手法の終わり

以前に読んだ「More Effective Agile “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標」と本書の2冊の読書によって、改めてウォーターフォールはもうアカンということへの確信が深められたのは良かったかもしれない(まあ、わかってるんだけどね)。

Essence 本の著者は、チームの作業方法を進化させるツールを提供することで、アジャイルムーブメントの価値と原則のレベルをさらに引き上げようとしている。
従来の多くの手法の取り組みとは違い、SEMAT はソフトウェアシステムを構築する上で、何が機能して、何が機能していないかを最もよく知る人、つまり、アーキテクト、アナリスト、設計者、プログラマー、テスター、ソフトウェアマネージャーにフォーカスしている。このことは、マインドセット(手法に対する考え方)に変化をもたらす。それは、従来の開発(ウォーターフォールのライフサイクル)からアジャイル開発に移行するために、ソフトウェア開発の考え方を変化させる必要があるのと同じだ。
意識すべきマインドセットの変化とは何だろうか。上記のアジャイルソフトウェア開発宣言とは違うが、そこから影響を受けたものが以下である。

  1. チームの一部が手法を選択するのではなく、チーム全体で手法を所有する。
  2. 手法の記述ではなく、手法の使用にフォーカスする。
  3. チームの手法は固定させず、継続的に進化させていく。

こうしたマインドセットは、ソフトウェアのプロには不可欠である。

モダン・ソフトウェアエンジニアリング 第23章 そして未来へ

(こういう鋭い文章が随所にあるのが、本書の一番良い事だと思う)