勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

More Effective Agileの後半部分も読んだ #デッドライン読書会

読むのが骨な(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第17回。今回はSteve McConnell氏の「More Effective Agile」後半部分(13章以降)がノルマである。最高にオススメの本だった。

90年代マイクロソフトの巨星たち(勝手な思い込み)

ところで自分の思い込みも多分にあると思うのだけれども、90年代前後にマイクロソフトに在席していた人はとても優秀だと思っている。

闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達
(必読!)

Joel on Software Joel on Software
(大好きな本。このブログを書き始めたきっかけでもある)

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)
(これも大好きな本。PMとしての自分のバイブル)

なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である

が、McConnell氏もMicrosoftに在席したというのはお恥ずかしながら知らなかった。

筆者が在席していた1990年代のMicrosoftでは、エスカレーションが非常にうまく行われていた。ある日の午後、上司が筆者のオフィスにやってきてこう言ったのを覚えている。「まいったよ。さっきまでBillGレビューミーティングに出席していて、こってり絞られた。2週間かかりっきりになっていた問題を、ビルは5分電話で話せば解決していたはずだったって指摘されてね。彼のところに回さなかったっていうんでこっぴどく叱られたよ。叱られて当然だと後悔している。彼に任せるべきだったのに、そうしなかったのだから。」
More Effective Agile “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標 (17.1 基本原則:間違いを許す、より)

BillGレビューについては More Joel on Softwareに掲載された「はじめてのBillGレビューのこと」が翻訳も含めて最高なんだけど、元ネタになっている英語ブログ記事は公開されているので、DeepL翻訳あたりで訳して読んでも十分読めると思う。
www.joelonsoftware.com

というわけで何を言いたかったのかというと、McConnell氏の書籍は元から好きだったのだけれども、さらに好きになったということだ。なんてったって、憧れの90年代マイクロソフトに在席していたんだぜ!

(改めて)More Effective Agile の感想

本書だが、最後まで読み終わった今、はっきりと「有用な本」と断言できる良書だった。
特に以下のような観点を持っている人にとっては大きな学びがあるだろう。

McConnnell氏がいいのは、すべてにおいてまず疑った上で、有用かどうか判断し、有用であれば活用するという姿勢である。
前半部の感想でも引用したのだけれども、この姿勢は最後まで貫かれていて良かった。

アジャイル開発に関するほとんどの書籍はエバンジェリストによって書かれている。エバンジェリストは特定のアジャイルラクティスを提唱しているか、アジャイル全体を奨励している。筆者はアジャイルエバンジェリストではない。筆者は「うまくいくもの」の提唱者であり、「なんの根拠もなく大袈裟な約束をするもの」への反対者である。本書では、意識高い活動としてアジャイルを扱うのではなく、管理的なプラクティスと技術的なプラクティスの集まりとして扱う。ここで扱うプラクティスは、その効果や相互作用をビジネス用語や技術用語で理解できるものである。
More Effective Agile “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標 「第1章 はじめに」

また、以下の2章については一般的にアジャイル開発が適用しにくいと言われているテーマにフォーカスしていて、これはとても参考になりそう。

  • 第20章 予測可能性
    • 一般的なアジャイル開発はデリバリーを優先するが、顧客が予測可能性(いつ機能セットがデリバリーできるか)を求めてきた場合にどうするか、という話
  • 第21章 規制産業
    • 開発方式に規制の強い産業(生命科学、金融、政府機関)に対するアジャイルアプローチについて。2014年にFDAが採択した医療機器ソフトウェア向けアジャイルラクティス利用ガイダンスを元に議論している。

ともかく、この本は新しい必読書の一つになることは間違いないだろう。ある程度ソフトウェア開発に関して学んできた中級者以上であれば楽しめるはずだ。新人/ジュニアクラスにはちょっとお勧めできない印象。

さて、次の課題図書は・・・

次回は今のところ、モダン・ソフトウェアエンジニアリングの予定である。かなりの分量なので、今回と同様に前後編に分けて取り扱うことにすると思う。

以下のセミナー(開催済)に参加したので、興味を持っているのだ。
smartse.connpass.com