2024年7月~12月に読んだ本のまとめ。カウント対象は期間中に読み終わったものに限り、読みかけの本は対象外としている。あとコミック、漫画雑誌類もけっこう読んでいるのだけれども、これは除外。
この6カ月では65冊の本を読み、2024年全体では133冊の本を読んだようだ。まあ通常運転という感じ。
いつもどおり半期で読んだ本の中で良かったものをピックアップしてみる。
文芸書のおすすめ(一般編)
いきなり悩ましい。ミステリー・エンターテイメントとしては「傲慢と善良 (朝日文庫)」(発売当時「婚約者が失踪」というあらすじにドロドロな恋愛ドラマを予感して避けてたのだけど、超よかった)や「地雷グリコ (角川書店単行本)」(殺人どころか事件何も起きないけど完璧なミステリで作者天才だと思う)なども推したいところなのだけれども、今年はこの本がダントツだろう。野崎まど「小説」である。
タイトルが「小説」なので、タイトルだけでまともに検索できないが、すべての小説読みが読むべき傑作だと思う(バビロンの続きも早く書いてほしいけど)ちなみに小説現代24年10月号(の物理版)には本作が全編掲載されているのみならず、インタビューも載っているのでおすすめ。
文芸書のおすすめ(趣味のSF編)
ソフトウェアエンジニア向けのイベントであるXP祭りで聞いた「銀河英雄伝説で学ぶスクラムチームに必要なリーダーシップ」に触発されて読んだ「銀河英雄伝説1 黎明篇 (らいとすたっふ文庫)」(創竜伝は読んでたけどこっちは未読だった)も良かったのだけど、SFで良かったのはこちら。
有名な「三体」以降、中国初のSF小説がいまもアツい。というわけで本書は中国初の短編SF小説集なのだけれども、素晴らしかった。言語化するのは難しいのだけれども欧米発のものより、感覚的にしっくりくるのだ。短編集なので気軽に読めるのもよい(それになにより、SFは短編が一番面白いのだ派)。教養書のおすすめ
今年は話題の新書を割と積極的に読んでいて、たとえば「言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書)」「学力喪失 認知科学による回復への道筋 (岩波新書)」「なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)」(俺は読めるよ)などは知的好奇心が刺激される良い本だった。が、この半期に読んで大変に面白かったのはネットで話題となったこちらである。
わたし自身が美術に興味を持っているという背景もあったが、とにかく文章が素晴らしく面白い。ちょっと話題のされ方で敬遠する気持ちもあったのだが、一気に読んでしまった。未読の方はぜひ手に取ると良いと思う。ビジネス書のおすすめ
先に言っておくと、最近話題となった本としては「THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める」(ダニエル・ピンクの新刊)「ユーモアは最強の武器である―スタンフォード大学ビジネススクール人気講義」「人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法」は、そこまで興味深くなかった(悪い本ではない)。自分の人生のタイミングではなかったというだけだろうか。そんな中で、この本はけっこう良かった。ただし邦題のつけかたが悪いので、読むべき人が手に取っていないような気がする。
本書は(ソフトウェアに限らず、巨大建築物やオリンピック準備などの)大規模プロジェクトの成否がどうやって決まるのか、そしてどうすればいいのかを論じた本である。そして結論が極めて真っ当で信頼できる感じ。おすすめ。技術書のおすすめ
今年の前半はわりとソフトウェアアーキテクチャ関連の本に傾倒していたが、前半はもう少し抽象度の高い本をいろいろ読んでいた気がする。
有用性という点ではこの本は今後も何度も開きそうな良い本だった。
この半期の振り返り
何度も引き合いに出して恐縮だが「なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)」では本が読めない理由として、現代人の(自分を取り巻く環境と一致しない)ノイズを避ける傾向があるとしている。まあ、そういう気持ちが世の中にあることは否定しないけれども、私はノイズだらけの森の中を散歩しながら、ときどき出会うキラッとした文章に目をとめて、ワクワクしたい。というわけでこの半期も今年もいい感じに乱読できたなぁというのが感想である。別にたくさん本を読めば偉いなどとは思っていないけど、わたしは引き続き、手あたり次第に本を手に取っていきたい。来年はどんな本に行き当たるか、楽しみだ(積読の山をチラ見しながら)。
2024年下半期に読んだ本リスト
- BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?
- 侍女の物語
- 組織を変える5つの対話 ―対話を通じてアジャイルな組織文化を創る →★感想
- 凍りのくじら (講談社文庫)
- 高校生だけじゃもったいない 仕事に役立つ新・必修科目「情報Ⅰ」
- 言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書)
- 奏で手のヌフレツン
- 走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA)
- マルドゥック・アノニマス9 (ハヤカワ文庫JA)
- 魔女狩りのヨーロッパ史 (岩波新書)
- グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船 (ハヤカワ文庫JA)
- 心の病気はどう治す? (講談社現代新書)
- ソフトウェア開発現場の「失敗」集めてみた。 42の失敗事例で学ぶチーム開発のうまい進めかた→★感想
- 訂正可能性の哲学
- シャーロック・ホームズとサセックスの海魔 クトゥルー・ケースブック (ハヤカワ文庫FT)
- なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)
- ツインスター・サイクロン・ランナウェイ3 (ハヤカワ文庫JA)
- マッドマックス 怒りのデス・ロード 口述記録集 血と汗と鉄にまみれた完成までのデス・ロード
- <責任>の生成ー中動態と当事者研究
- 訂正する力 (朝日新書)
- 中年危機 (朝日文庫)
- 言葉の魂の哲学 (講談社選書メチエ)
- 銀河ヒッチハイク・ガイド 銀河ヒッチハイクガイドシリーズ (河出文庫)
- 傲慢と善良 (朝日文庫)
- プライベートな星間戦争 (星海社 e-FICTIONS)
- 赤と青のガウン オックスフォード留学記
- くらべて、けみして 校閲部の九重さん
- ソフトウェアアーキテクチャメトリクス ―アーキテクチャ品質を改善する10のアドバイス→★感想
- 働き方の問題地図 ~「で、どこから変える?」旧態依然の職場の常識
- 知的生活の方法 (講談社現代新書)
- 文藝春秋2024年9月特別号
- ハイデガー入門 (ちくま新書 277)
- 方舟 (講談社文庫)
- 小説
- 無能より邪悪であれ ピーター・ティール シリコンバレーをつくった男
- 横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS)
- ひとり暮らし (新潮文庫)
- 献灯使 (講談社文庫)
- ヒロシマ・ノート (岩波新書)
- アーキテクトの教科書 価値を生むソフトウェアのアーキテクチャ構築→★感想
- 贖罪 (新潮文庫)
- ソフトウェア品質知識体系ガイド (第3版) ―SQuBOK Guide V3―
- 銀河英雄伝説1 黎明篇 (らいとすたっふ文庫)
- THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める
- ユーモアは最強の武器である―スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
- 宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選
- 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~
- 機工審査官テオ・アルベールと永久機関の夢 (ハヤカワ文庫JA)
- 学力喪失 認知科学による回復への道筋 (岩波新書)
- アジャイルなプロダクトづくり 価値探索型のプロダクト開発のはじめかた→★感想
- にしさんの教え: 日本のテストコミュニティを作った男
- バッタを倒すぜ アフリカで バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)
- 組織を強くする 技術の伝え方 (講談社現代新書)
- 禅とオートバイ修理技術 上 (ハヤカワ文庫NF)
- 史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち (河出文庫)
- 人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法
- 生き延びるために芸術は必要か (光文社新書)
- 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選 (海外文学セレクション)
- 初めて語られた科学と生命と言語の秘密 (文春新書)
- エンタープライズアーキテクチャのセオリー→★感想
- スタッフエンジニアの道 ―優れた技術専門職になるためのガイド
- 地雷グリコ (角川書店単行本)
- 炒飯狙撃手 (ハーパーBOOKS)
- 禅とオートバイ修理技術 下 (ハヤカワ文庫NF)
- サイケデリック・マウンテン
過去の読書ふりかえり記事
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- 2017年下半期に読んだ本まとめ - 勘と経験と読経
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あと過去にこんなのも書きました