勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

「世界はシステムで動く」を読んでシステム思考をキャッチアップした #デッドライン読書会

読むのがホネな(積みがちな)技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第23回。今回選んだタイトルは「世界はシステムで動く ― いま起きていることの本質をつかむ考え方」である。いわゆる「システム思考」に関する本であり、この分野はそういえば不勉強だったので選んだもの。

ドネラ・メドウズさんと本書について

本書を読むまで詳しく存じ上げていなかったのだけれども、有名な「成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート」や「世界がもし100人の村だったら」の原案となったコラム「村の現状報告」に関わっていた方であった。

1993年、ドネラ・メドウズは、今あなたが手にしているこの本の草稿を完成させました。原稿はそのときには出版されず、数年にわたって仲間内で回覧されていましたが、ドネラは、本書の完成を見ることなく、2001年に突然この世を去ってしまいました。その後、数年たっても、ドネラが書いたものは幅広い読者にとって変わらず有益であることがわかりました。ドネラは、科学者であり、作家であり、システム・モデリングの最高のコミュニケーターだったのです。

上記の通り、本書は

  • 一般向けの解説書であり
  • 平易にシステム思考の基本的な原則
  • システム思考から発展させた(我々エンジニアになじみ深い言い方でいうと)様々なプラクティスとアンチパターン

が含まれていて、非常に読みやすいものとなっている印象である。

感想:モデリングベースで長期的・俯瞰的視点を持つために

巻末の解説でも言及されているが、「システム思考」は様々な学派や流派がある。本書で紹介されているものは「システム・ダイナミクス学派」に所属するようである。よって

  • 観察対象に対して数理的なモデルを検討する(抽象的なお絵かきでは終わらない)
  • モデルを構築して、シミュレーション思考で考える
  • モデルの構造からパターンを読み取る

という点が特徴であるように感じた。ここが、エンジニアとしての自分の思考には強くフィットしたと思う。

なお本書ではエッセンスが紹介されているのみであるが、本来的にはモデリングツールを活用して身近なビジネス課題や社会課題について深めていくべきなのだろう(残念ながら、本書では基本的なモデル概念しか紹介されておらず、モデリングやシミュレーションの詳細は触れられていない。ツールについては巻末に簡単な紹介があるのみ)。
以下のWikipediaページで紹介されているようなモデルを手元で動かしてみたいものだ。
en.wikipedia.org

ざっと調べた限りだと、このツールを使うのがよさそう。

とはいえ20年前の本であるということ

本書をきっかけに、(システム・ダイナミクス的な)システム思考の活用は深めたいと思うと思う一方で、気になったのは本書が20年前の本であるという点だ。
この現代においては進化したテクノロジービッグデータという「理論をすっ飛ばして正しい答えを導く」道具も誕生している状況である。
本書が紹介している深い思考と、ツールによる端的な解決のバランスというのは今後意識しておくべきことだろう。
また分析自体はテクノロジーに頼ったとしても、本書で紹介されている「システムの落とし穴」や「システムの世界に生きるための指針」はチェックリストとして活用し続けたほうが良いのだろう。

この本も読みたいなぁ(時間があれば)