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「教育心理学概論」と「教育心理学特論」を比較してみた

アジャイル開発界隈で数年前から話題の「教育心理学概論」という放送大学教材がある。ただし放送大学としては本科目は終了しており、現在は放送大学院で「教育心理学特論」という形で提供されている。では「概論」と「特論」では何が変わっているのか、ちょっと調べてみた。「教育心理学概論・特論」は人をより賢くするにはどうすればよいかというテーマを扱った教育心理学に関する授業テキストである。

教育心理学特論 (放送大学大学院教材)

教育心理学特論 (放送大学大学院教材)

TL;DR

教育心理学特論」のアップデート内容に関する説明

教育心理学特論」の「まえがき」では次のように説明されている。

この印刷教材は、私たち自身が実践の科学を試みた証左でもある。私たちの1人である三宅芳雄が故三宅なほみ氏と共に作った『教育心理学特論』('12)と『教育心理学概論』('14)をベースとしながら、ほかの執筆者の2人も含め、実際にその知見を使って実践を行い、結果を踏まえて、状況が複雑に変わろうとも確かに使えるという知見を残し、それ以外を書き換えた。特に、三宅なほみ氏と共に開発・発展させた「実践の道具」である「知識構成型ジグソー法」を軸とした実践研究の成果を第9章以降に大幅に加筆した。

というわけだが、実際にはどうだろうか。実際に2つのテキストを並べて内容を比較してみた。

教育心理学特論」と「教育心理学概論」印刷教材の比較

以下が2つのテキストをざっと比較した結果である。結果として「概論」の全ての章は何らかの形で引き継がれており、さらに情報が追加されている形になっているようだ(一語一句確認しているわけではないが)。
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複数の章が統合されているので何かしら省略されているのではないか、という不安があるかもしれないが、おそらく問題無いと思われる。そもそもボリュームが大幅にアップしているのだ。

  • ページ数:249ページから300ページに増量
  • 1ページあたりの情報量:フォントが小さくなったわけではなさそうだけど、ページのマージンを削っているようで1ページの情報が増えている
  • ちなみに価格も上がってはいる:2100円→2900円

「概論」は放送大学教養学部科目だったのに対して「特論」は放送大学大学院の科目であることから、各章について論考等が付け加えられているのも特徴と言えるだろう(これを、取っつきにくくなったと捉えるのか、読みごたえが増えたと考えるのかは人によるだろうが)。

というわけで、いまから「教育心理学概論」に興味を持ったのであれば「教育心理学特論」を選んだほうがお徳のようである。

ところで、実際の放送大学の講義はどうか?

わたしは現役の(?)放送大学生ということもあるので、オンデマンドで大学院の講義もオンライン視聴が可能である。そこで1月末から視聴を始めているのだが、かなり興味深い。放送大学に入学しなくともラジオ、BSラジオ、radikoなどで視聴可能なので検討をお勧めする(4月、または10月から週次放送。1月後半~2月、7月後半~8月に集中再放送がある)。

  • 形式はラジオであり映像はなし
  • 印刷教材は補足資料の位置づけであり、原則として三宅芳雄先生+白水先生他(章によって異なる)の対談形式である
  • 印刷教材では触れられていないポイント、事例に関する感想やコメントが充実しており、非常に面白い

もちろん放送大学に入学すれば、提供中の科目についてはアーカイブに一括してアクセスできる(教養学部制でも大学院を含む全ての授業が視聴可能)。