読むのがホネな技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第72回。同僚と読書期限を約束することによって積読が確実に減るという仕組み。過去記事はこちら。
さて、今回読む本は「アジャイルなプロダクトづくり 価値探索型のプロダクト開発のはじめかた」である。 うまくいっていない(自社のソフトウェア)プロダクトの開発を題材に物語と解説で構成されている本。
note.comこれまでプロダクトづくりに関する書籍を数冊書いてきました。あらためて、そこに1冊積み上げるのは、プロダクトづくりで立ち往生しているチームによりわかりやすく、かつ実践的な手がかりを得てもらいたいと願ったからです。
アジャイルなプロダクトづくり 価値探索型のプロダクト開発のはじめかた、はじめに より
読み取るべきは感情というナラティブアプローチ
本書の特徴は小説形式の物語とテクニックに関する解説が交互に登場する点だ。有名なのは「ザ・ゴール」とか「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」だろうか。
小説形式なのでとっつきやすく読みやすい、というのはもちろんそうなのだろうけど、小説形式である重要なポイントは共感し、自分自身の行動を変えていくことにある。
というわけで、主人公である笹目に共感していくというのが良い読み方だと思う(もちろん対象は主人公以外の登場人物でもいいのだけど)。
笹目(ささめ)
入社5年目。受託開発のプロジェクトを経て、自社プロダクトである「プロジェクト管理ツール」の開発にエンジニアとして参画している。すでに3年が経過しているが思うように結果が残せず、スプリントレビューでは毎回詰められる日々を送っている。
アジャイルなプロダクトづくり 価値探索型のプロダクト開発のはじめかた、第一部 主な登場人物 より
(主人公が若けェ・・・)
全般的な感想
という『アジャイルなプロダクトづくり』だが、冒頭で紹介したように、うまくいっていない(自社のソフトウェア)プロダクトに関わる全員に読んでもらいたい本だった。特に将来のリーダー候補には特におすすめという印象。
- テクニック面は割とオーソドックスだが、物語形式で「使いどころ」がわかりやすく紹介されている
- 欧米発の類書に比べて、日本の企業組織にフィットした前提条件や対策となっている(まあ、あたりまえなのだけれどもこの点は重要だ)
- (立往生している状況下での)ぶっちゃけたり、悪い雰囲気を突破するヒントがある
これは予想だが、実際にプロダクト開発の伴走を重ねてきた著者の経験(=苦労)が凝縮されているのだと思う。またリアルでは言えない「本当は言いたかったこと」も組み込まれているんだろう。
実際、物語パートの1行目は以下のセリフではじまる。
「こういうのはプロダクトづくりとは呼ばない。」
アジャイルなプロダクトづくり 価値探索型のプロダクト開発のはじめかた、第一部 プロローグ より
これを著者の市谷さんはいろんな場所で本当は言いたかったんだろうなぁ・・・と思いながら読んだ。
気になったところ
ちょっとひっかかったのは仮説キャンバスと検証キャンバスである。個人の嗜好もあるのだけれども、〇〇キャンバスというのが世の中には溢れかえっているので注意したい。
- テンプレート思考に陥ってしまわないか(穴を埋める作業に没頭とか)
- スライドショー思考に陥ってしまわないか(綺麗なお絵描きに時間を溶かす)
- チームですでに〇〇キャンバス作っている場合に混乱しないか
- 現在進行中の生成AI活用と相性が悪くないか
個人的にはキャンバスアプローチは(コミュニケーション手段としては有用なのだけれど)諸刃だと思っているので注意したい。とはいえ、何枚かまずは手元で書いてみないとわからないなぁ。というわけで少し練習する予定。
というわけで本書は読了。
さて次は何を読もうか。以下が候補かな(読み始めている本はリストから消している)。
- エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか(積んでる)
- エンタープライズアーキテクチャのセオリー(積んではいない)
- 脳に収まるコードの書き方 ―複雑さを避け持続可能にするための経験則とテクニック(オラのサブスク に入っているので論理的には積んでる)
- ドメイン駆動設計をはじめよう ―ソフトウェアの実装と事業戦略を結びつける実践技法(同上)
(列挙してみたら意外と多くて、ちょっと焦りを感じ始めている)