読むのがホネな技術書やビジネス書を取り上げて2週間の読書期限を課して読んでアウトプットする仮想読書会「デッドライン読書会」の第71回。同僚と読書期限を約束することによって積読が確実に減るという仕組み。過去記事はこちら。
さて、今回読む本は「アーキテクトの教科書 価値を生むソフトウェアのアーキテクチャ構築」である。各種の宣伝で「アーキテクトを目指すITエンジニアのための本」と紹介されているが、さてどうだろうか。
www.shoeisha.co.jp「アーキテクトの教科書」の全体的な感想
ひとことで言えば良い本。薄い、読みやすい、内容が絞り込まれている。筆者が「はじめに」で書いてある通りであり、アーキテクト志向の若手に早い段階で読むことをおすすめしたい本だ。
本書は、筆者が若手だった頃にこんな本があればもっと効果的に学習を行えただろう、という本を目指して執筆しました。アーキテクティングに主軸を置きつつ、設計やテストなどソフトウェアエンジニアリング全般について広くカバーしています。
アーキテクトの教科書 価値を生むソフトウェアのアーキテクチャ構築、はじめに より
類書だと例えば技術雑誌の連載を再構成したような本も存在するが、そのような本は想定読者がもっと幅広いので難しかったり、特に本書の特徴でもあるコード寄りの内容が薄まった抽象度が少し高いものになりがちである(すべてを確認したわけではないけれど)。そう、本書は実装までを射程にしているコンパクトな本というのが特徴だろう。
そして私が推したいのは終章に学習姿勢が語られている点だ。ソフトウェア開発は多様であり、本書のカバー範囲と実際の業務がピッタリと重なり合うことはないだろう。そういう意味でも、まず本書を読んでから別の書籍やトピックについて深めていくことが望ましい。
その他雑感
- 1.3章の「大きな泥団子」の図が泥団子っぽく(?)ない。マイクロサービスアーキテクチャの図と似てしまっているのは、ちょっともったいない。
- いろいろな考え方があるとは思うが、ビジネスアーキテクチャはほとんど本書の射程に入っていないようだった。IPAのSAより踏み込みが浅めな印象。
- 4.2章で「ユースケース実践ガイド: 効果的なユースケースの書き方」(名著である)が紹介されているが絶版で入手されないのがつらい。本書を一緒に読んでいる同僚が困っていたので貸し出した。翔泳社さん、なんとかなりませんか。
- これは本書の引き算の良い点だと思うが、組織論(コンウェイの法則とか)とリーダーシップに書面を割いていないのが好感度高かった。もちろん必要な知識だと思うのだが、最初から学ぶようなことでもないと思うのだ(というか必要になってから学べばよい)
- プロダクトアーキテクチャ関連のトピックはあったほうが良かったかも。受託開発や自社サービス開発であれば問題無いが、本書の知識でパッケージソフトウェア開発を行うといろいろな壁があるかも。個人的なおすすめは「ビヨンド ソフトウェア アーキテクチャ Object Oriented Selection Classics」。
- 読書術で紹介されていた「本を読む本 (講談社学術文庫 1299)」は恥ずかしながら未読だった。読まなければと思った。
というわけで本書は読了。買って積んでいたので読書会で取り上げたのは良い機会だった。
さて次は何を読みますかね。以下が候補である。
- エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか(積んでる)
- エンタープライズアーキテクチャのセオリー(積んではいない)
- 脳に収まるコードの書き方 ―複雑さを避け持続可能にするための経験則とテクニック(オラのサブスク に入っているので論理的には積んでる)
- スタッフエンジニアの道 ―優れた技術専門職になるためのガイド(同上)
- ドメイン駆動設計をはじめよう ―ソフトウェアの実装と事業戦略を結びつける実践技法(同上)
(列挙してみたら意外と多くて、ちょっと焦りを感じ始めている)