最近コミニュケーションに関するいくつかの問題が身近にあって、いろいろと考えたことを書く記事。上司部下間のコミニュケーションの問題には階層があって、いちばん改善すべきなのは部下側ではなく上司側の問題だと思っていることについて。なお、顧客との(もしくは受発注者間の)コミュニケーションの話はまた別。
「コミュ力」の問題はだいたい上司の問題説
あくまで主観的なものだけれども、いわゆる「コミュニケーション能力(いわるゆコミュ力)」の問題の多くは実際には上司(情報の受取り手)の問題で、部下(出し手)の問題は小さいと思っている。
最近読んだ本だと「職場の問題地図」がこの問題を非常に明快に示していた(ちなみに同書はとてもおすすめ)。

職場の問題地図 ?「で,どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方
- 作者: 沢渡あまね
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2016/09/16
- メディア: Kindle版
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「部下の伝えるスキルが低い」と書かれていると部下の問題のようにも読めるけれども、適切な報告の仕方を指導教育していないという意味ではこれも職場や上司の問題である。同書でオススメしている指導フォーマットは次のようなもの。
- 所用時間を示し相手の都合を確認する
- まず「報」か「連」か「相」かを伝える
- 結論を伝える
- 論点を数で示す(ナンバリング)
「小松課長、いま5分間お時間よろしいですか? 決算早期化プロジェクトの進め方について、ご相談が2点あります。キックオフの日程と、会場についてです。まず1点目の日程について。日程は延期すべきと思います。なぜなら・・・・」
職場の問題地図 ?「で,どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方
こういった情報の受け止め方、どういう形で吸い上げるのかという業務プロセス設計上の問題を無視して、「アイツはコミュニケーション能力が低くて、情報が上がってこないんだよな」などと言ってはいけないという話だと思っている。
部下/メンバーに空気を読ませる時点で負け
報告の仕方というテクニック的な側面もあるとは思うけれど、むしろ問題の根っこには、雑なアサインメントやプロセスの組み立てによって、部下やメンバーに「空気を読ませすぎている」ことだと考えている。もちろん問題にはグラデーションがあって、どこまでやれば正解で、どこからが不備という線引きはできないのだろうが、
- 責任範囲が不明確
- 裁量の範囲があいまい
- やっていいことと、いけないことの線引きがあいまい
- 上司や組織の意思決定が場当たり的で一貫していない
- 過去の意思決定の精度が不明なので踏襲していいのか常に不明
などが原因となって、なにをどこまでコミニュケーションすべきか常に空気を読みながらやらなければいけない状況が発生して、非効率やコンフリクトが発生しやすくなるのではないだろうか。
ではどうするか。いろいろ考えてみたのだけれどもまずは空気を読ませないために、個々人の役割を具体的かつ明確にするのが良いかと思っている。たとえばちゃんと職務記述(Job Descriotion)を書けばいいのではないだろうかというのが現時点での個人的な結論だ。
- 職務記述書 - Wikipedia
- Associate Solutions Architect - ジョブID:533787 - Amazon.jobs 例としてのAWSさんのJob Descriotion
- 7 Steps to Writing the Best Job Descriptions | The Magnet || presented by Ongig
ひょっとしたらうまく対応できている組織や現場も多いのかもしれないが、割と日本企業の多くはこういった形で個々人の職務内容を明確化しないのが一般的じゃないかと思っている。
- マネジメント側が組織やプロジェクトへのアサイン完了した段階で思考停止しまう
- 何をすべきかを「考えることからが仕事だ」といってしまう、組織設計不備の責任転嫁
というあたりが根っこにあるのではないだろうか。
つまり、「空気読めよ」という批判はどれも他のフレーズに言い換えることができるわけだ。「空気読め」と言って個人を批判すれば、自分の考えや意向、思っていることを明確に言葉にする必要がないので、話者のコミュニケーションの怠慢とも言えなくはない。自分を含めた“周りの意向”を非常に曖昧な「空気」という言葉で表現し、空気にそぐわない個人へ責任転嫁しているだけの話である。
ただし、これはあくまで組織内の話でである
というわけで、組織やプロジェクト内部で部下に「空気を読ませる」ことは悪手だと思っている。が、顧客や発注者に対しても同じ論法が通じるかというと、それはまた別の話だろう。「空気を読ませるようなRFPを出す発注者が悪い」と言ってはいけない(もちろん限度はある)。この場合は「空気が読める」ことは付加価値だからである。このあたりはまたどこかで考えてみるつもり。

- 作者: 堀紘一
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/10/10
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