勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

『他者と働く』を読んで考えたこと #デッドライン読書会

対象を決めたら2週間で読み切り、アウトプットして、感想戦をするという読書会企画の第15回。今回の対象は『他者と働く』である。この本は一度読んでいたので再読になる。良い本なのだけれども、なんだろう、この違和感は。

どうしてわれわれは『他者と働く』のが下手なのか?

誰もがなんとなく、コミュニケーションによる課題感を感じている。なんとかしたい。というわけで、自分も様々な書籍などを読み漁ってきた。最近読んだだけでもこんなに・・・(しかも、思い出すのが面倒なだけで他にも山ほどある)

まぁ、わかっているのだ。結局のところ『他者と働く』方法をきちんと学んだことが無いから、そして何かを学べばもっとうまくやれるという期待を持ってしまうからなのだ。

人間が一人でできることは限られています。この世に存在するすべての人間が、他者と協働することで「自分一人ではできない何か」に取り組んでいます。「チーム」は、ビジネスパーソンは勿論、登校班で学校に行く小学生からゲートボール部で活動する高齢者まで、老若男女誰しもが関わるものです。
にもかかわらず、学校でも会社でも、チームづくりについて体系的に学ぶ機会はないと言っても過言ではありません。
THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

(ちなみに「THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)」はコンパクトにノウハウが詰まっていて非常におすすめ)

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

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というわけで沢山の働き方関連の本を読み漁ってきたわけだけれども、では本書『他者と働く』はどうなんだろう。感想をひとことでいうと「とてもエレガントだが、紹介されている方法論は極力使いたくないなぁ」という感じ。

『他者と働く』

さて本書のことは様々な書評やレビューなどで紹介されているのでそちらをご覧いただくとして

この後の所感を論じるために論旨をピックアップしておくと、だいたい本書はこんなことが書かれている。

  • 既存の方法で解決できる問題のことを「技術的問題」(technical problem)、既存の方法で一方的に解決ができない複雑で困難な問題のことを「適応課題」(adaptive challenge)と呼ぶことができる(ロナルド・ハイフェッツの定義)
  • 技術的問題はなんとかなっている。そして適応課題で社会や組織がこじれている
  • 適応課題に対応する方法として著者はナラティブ・アプローチという方法論を元に、(著者の考案した段階的プロセスによる)対話を提唱している

内容的にはかなり興味深い。特に自分の周りのソフトウェア開発界隈では、アジャイル開発コミュニティ周りでかなり話題になっていた。実際問題、わたしもいくつかの課題に対する対応方針を検討する時に参考にさせていただいた。有用な本であることには疑いはない。

だが、しかし・・・

本書が必要な状況そのものが不幸ではないか?

うまく表現できないのだけれども、本書が活用できる状況は非常に不健康な状況なんじゃないだろうか、と思ったのだ。こんなことで悩んでいる職場は、嫌だ。

そもそも論で

  • こじれないようにするほうが大事
  • こじれちゃったとしても、1対1の「対話」はかなり最終手段であって、その前にできることがたくさんありそう
    • TEAMINGのテクニックとか
    • 文化的なアプローチとか
    • 時と場合によるけれど、相手をチェンジするというのも一つの考え方だと思う

ということを考えてしまったのだ。

なんというか、本書の想定しているアプローチは「相当に煮詰まっちゃっている」ような気がする。そういう意味では、自分は煮詰まる前に水を足したいというのが本音だ。

もちろん、ちょっと目を離した隙に火にかけすぎてしっかりと煮詰まっちゃうことはあるので、その際にはきっと読み返して対話にチャレンジするとは思うのだけれども・・・

さて、次は何を読むかなぁ。

かな?