ちょっと前に目に付いた「1 on 1 で 何を話すのか? マネージャ/ソフトウェアエンジニアの立場から」というブログ記事で紹介されていた「インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学」を読んだメモ。かなり以前から気になっていたのだけれども、現在は絶版で古書がプレミア価格になっている。さすがに買えないので公立図書館で借りて読んだもの。普通の管理職、マネジャーとして非常に勉強になる良い本だった。
- 経営陣 or 上司が 1 on 1 の価値を分かってくれない
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1 on 1 で 何を話すのか? マネージャ/ソフトウェアエンジニアの立場から - サンフランシスコではたらくソフトウェアエンジニア - Higepon’s blog

- 作者: アンドリュー・S.グローヴ,Andrew S. Grove,小林薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1996/04
- メディア: 単行本
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インテルとGoogle
そういえば、インテルのマネジメント手法から、OKRや1 on 1といったものをGoogleなどが取り入れている模様。
- グーグル式「管理しない人事」が イノベーションを起こす : プレジデント(プレジデント社)
- OKR:組織内のコミュニケーション効率化と重要なゴールへの集中を促すシステム - yaotti's diary
OKRについては、How Google Worksでも触れられている。
1999年末にジョン・ドーアが行ったプレゼンテーションは、グーグルのあり方を根本的に変えた。創業者たちの「発想を大きく」の精神を制度化するシンプルな手段を提唱したのである。ベンチャー・キャピタル、クライナー・パーキンスがグーグルに出資したばかりで、ジョンはその代表として取締役に就任したばかりのころだった。プレゼンのテーマは、ジョンがインテル元CEOのアンディ・グローブから学んだ、OKRと呼ばれる目標を使ったマネジメント手法だった。OKRには、従来型の「低めに設定して大きく超過する」目標設定とは明らかに異なる、いくつかの特徴がある。
How Google Works
蛇足だけど1 on 1 は爆速経営のYahoo!Japanでも取り込んでいるよう。
今回読んだ「インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学」にはOKRはそのままの形では登場していない。が、従業員間の競争というコンセプトについては書かれている。
だから仕事の中に競い合うスポーツの特徴を持ちこもう。そしてその精神を職場に持ち込む最善の方法は、従業員が自らを測定できるようにゲームとしての規則と方法を設けてやることである。最高の業績を引き出すということは、何かあるいは誰かに対抗して上にあがっていくという意味である。
インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学
1 on 1 はストレートにそのまま紹介されている。
インテル社で、ワン・オン・ワンというのは監督者と部下の間のミーティングのことで、仕事上の関係を維持する重要な方法となっている。その主たる目的は、相互に教えたり、情報を交換することにある。特定の問題や状況について話すことによって、監督者はスキルやノウハウを部下に教え、物事のアプローチの仕方を提案しうる。同時に、部下のほうは自分が何をやっているのか、何に関心があり心配しているのかの情報を監督者に詳しく伝えうる。寡聞にして、定例的に予定した形でのワン・オン・ワンというのは、インテル社以外ではほとんど見ることができない。
インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学
というわけで、少なくとも本書の一部は陳腐化せず現代にも通用するマネジメント手法だろう。そんなことを考えながら読んだのであった。
感想
冒頭にも書いたけれども、普通の管理職、マネジャーにとって非常に良い教科書という印象。むしろ、現場から(望むと望まざるとにかかわらず)管理職にキャリアアップした人の陥る「何も生産していないマネジャーという仕事はなんなのだろうか」という疑問に真正面から問いかけているあたりが、非常に良かった。
マネジャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学
「パパ、本当はどんなお仕事をしているの?」
こういった質問に対してわれわれはどうもうまく答えられない。実際に何をやっているかは、しかとはつかまえにくいし、要約するのも難しい。実際にしていることのほとんどはあまり重要とも思えないので、ビジネス内での自分の位置がなかなか明確化や正当化がしにくい。こうした問題が発生する理由の一つは、われわれの活動(実際に行なうこと)とアウトプット(達成するもの)との間にはっきりと相違があるからである。後者は重要で有意義で価値があるように思える。前者はとるに足らない、意味のない、雑然としたものに見られがちである。だが、患者を治癒させることがアウトプットとなる外科医は、洗浄、切開、縫合に時間をかける。そして、これらの活動はあまり尊敬すべきものとは受けとめられないものだ。
インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学
世の中的には、「管理しないマネジメント」「フラット化」みたいな流行もあると思う。だけど、日本での一般的な企業に勤めて、わりと「普通の」マネジメントが求められる。その際に問題となる。
- チームの生産性をどう管理し、向上させていくか
- メンバーをどうマネジメントして、評価するか
といった点について真正面に取り扱われていて、とても良い勉強となった。
目次はこんな感じ
- 訳者はしがき
- 新版への序文
- 1983年以降に何が起こったか
- 第一部 朝食工場 ーー生産の基本原理
- 生産の基本
- 三分間ゆで卵の生産原理は
- 製造作業の実際
- 状況が複雑になると
- 大量生産の場合は
- 付加価値をつけること
- 朝食工場を動かす
- インディケーターこそ大事なカギ
- ブラックボックスの中をのぞくには
- 将来のアウトプットをコントロール
- 品質の保証
- 生産性を高めるために
- 第二部 経営管理はチーム・ゲームである
- 経営管理者のテコ作用
- マネジャーのアウトプットとは
- 「パパ、本当はどんなお仕事をしているの?」
- 社内情報の収集と提供
- 経営管理活動のテコ作用
- マネジャーの活動速度を速めること――ラインのスピードアップ
- 組織内に組み込まれたテコ作用――マネジャーの部下は何名が適切か
- 仕事の中断――マネジャーを悩ますこと
- ミーティングーーマネジャーにとっての大事な手段
- プロセス中心のミーティング
- 使命中心のミーティング
- 決断、決断、また決断
- 理想的なモデルは
- 同僚グループ症候群
- アウトプットへの努力
- 計画化――明日のアウトプットへの今日の行動
- 計画策定方式(プランニング・プロセス)
- プランニング・プロセスのアウトプット
- 目標による管理――日常業務にプランニング・プロセスを適用すると
- 第三部 チームの中のチーム
- 朝食工場の全国的展開へ
- 混血組織
- 二重所属制度
- 工場保安係はどこに所属すべきか
- 混血組織を働かせる
- もう一つの妙案――二面組織
- コントロール方式
- 自由市場原理の力
- 契約上の義務
- 文化的価値
- マネジメントの役割
- 最も適切なコントロール方式
- 仕事のコントロール方式
- 第四部 選手たち
- 結びにかえて――これからの行動指針チェック・リスト
翻訳の古さはあるとしても、良い本なのでKindleなどで復刊すればいいのに。
なお以下Googleのマネジメントに関する本はどちらも面白い。おすすめ。

- 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/10/17
- メディア: Kindle版
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- 作者: ラズロ・ボック
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/07/30
- メディア: Kindle版
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