勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

いまさらスティーブ・イエギの「プラットフォームぶっちゃけ話」を読んだ

リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES)」を読んでいたら、2011年に話題となったらしいスティーブ・イエギの「プラットフォームぶっちゃけ話」が紹介されていたので探して読んだという話。原文はGoogle+とともに消えているみたいだが、増田に翻訳があって助かった。

リーンエンタープライズ」での紹介

リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES)
この話を知ったのは「リーンエンタープライズ」なのだけど、こんな感じで紹介されている。

10.1 成長に対するAmazonのアプローチ
2001年、Amazonはある課題を抱えていました。彼らがウェブサイトで動かしているObidosと呼ばれるシステムは、大きな一枚岩の「巨大な泥だんご」であり、スケール不可能な状態にありました。阻害要因はデータベースでした。CEOジェフ・ベゾスは、この課題を機会に変えました。Amazonを他の業者も活用できるプラットフォームにしたいと考えたのです。究極の目標は、顧客ニーズに合わせることでした。それを念頭に置いて、彼はサービス指向アーキテクチャを作るように指示したメモを技術スタッフに向けて送りました。スティーブ・イエギは、以下のように要約しています†3。
[†3] スティーブ・イエギの有名な「プラットフォームぶっちゃけ話」は、テクニカルリーダー必読です。
リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES)

テクニカルリーダー必読といわれると、読まざるをえない(テクニカルリーダーじゃないけど)
ちなみに「大きな泥だんご」はソフトウェアの有名なアンチパターンである。久しぶりにこの単語を見たような気がする。

そういえば「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」でも言及されていた

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

エンジニアリング部門は、古くてつぎはぎだらけとなったインフラストラクチャーの補修をやっきになって進めていた。もともとのフレームワークは1990年代にシェル・カファンが作ったオビドスというコードできれいにまとまったものだった。アマゾン幹部、ヴァーナー・ボーガスの言葉を借りれば、成長に合わせてそれを「ガムテープとCRC5-56で補修」してきたが、そういうやり方では対応しきれないほどアマゾンが大きくなってしまったのだ。(中略)
技術インフラストラクチャーについてはサービス指向アーキテクチャーと呼ばれるシンプルで柔軟性の高いものへの移行を決定。(中略)
こうしてアマゾンは、独立した部品が互いにつながる形に技術インフラストラクチャーを作り替える作業に入った。(中略)新しいコード(アマゾンの支流が分かれる部分の地名にちなんでグルパという名前が付けられた部分もあった)への移行は3年以上の長期にわたる大変な作業で、問題が起きたらすぐ対処できるようにポケットベルを持ち歩くなど、ネットワークエンジニアたちは大変な苦労をした。
その結果、優秀な技術者が何十人も辞め、その多くはグーグルへ移籍する事態になった。そのころグーグルへ移ったひとりがスティーブ・イエギである。彼はのちに、昔の勤め先についてソーシャルネットワークのグーグルプラスに長文を投稿。友人にのみ公開の予定だったらしいが、うっかりインターネットに公開して誰でも読めるようにしてしまった。
ジェフ・ベゾス 果てなき野望

うっかりすぎるw(が、身につまされる)

読んだ感想

  • 20年前に起こったことを10年前に書かれてた記事である、ということには改めて驚いてしまう
  • リーンエンタープライズ」ではこの事例を「ミッションコマンド」つまりミッションに基づく分散意思決定に移行する例として挙げているのだけれども、本文書を読むとその難しさがよくわかる。というかこの事例を参考にするのは正しいのかちょっと悩ましい
  • 全般的にはプラットフォームの話なのだけれども、ベソスが発したと言われている6つの命令には「プラットフォームを作る」という言葉は一切出てこない

今も現在進行中のDXとかトランスフォーメーション、2025年の崖、モノリシックなシステムの再構築などの文脈においては、もっと読まれても良い文章だとは思った。

参考