最近「インターネットは言葉をどう変えたか デジタル時代の〈言語〉地図」を読んで考えたこと。「会社人」と「準インターネット人」。最近会社のテックブログを始めた話。
「インターネットは言葉をどう変えたか」という本のこと
この本に興味を持ったきっかけは以下のPodcastである。
『インターネットは言葉をどう変えたか デジタル時代の〈言語〉地図』グレッチェン・マカロック|音読ブラックスワン#65 by blkswn radio
興味があれば上記を視聴していただくか、以下のページなどを参照していただくのがいいだろう。
本書は割と堅めの内容で、気軽に読むタイプの本ではないのだけれども、非常に知的な刺激が得られる良い本だと思っている。
インターネットやモバイル機器が普及したおかげで、ふつうの人々がものを書く機会は爆発的に広まった。書くという行為は、わたしたちの日常生活に欠かせない会話の一部になったのだ。
(インターネットは言葉をどう変えたか デジタル時代の〈言語〉地図 第1章 カジュアルな書き言葉、より)
正インターネット人と準インターネット人
この書籍「インターネットは言葉をどう変えたか」で特に興味深いと感じたのが「第3章 インターネット人」である。ここではインターネット国へのデジタル移民を旧インターネット人(Old Internet People)、正インターネット人(Full Internet People)、準インターネット人(Semi Internet People)、後インターネット人(Post Internet People)、前インターネット人(Pre Internet People)、非インターネット人(Non Internet People)、と区分して論じている。その全てについては書籍を参照していただくのが良いが、ここでは準インターネット人と正インターネット人について少し紹介する。
- 正インターネット人(Full Internet People)
- 幼少期にはインターネットは無く、成人する前後にインターネット国にデジタル移民。インターネットを社会生活の手段として完全に受け入れている
- AIM、MSNメッセンジャー、ICQ、ブログ、マイスペースを経験し、フェースブックやツイッターの初期ユーザーであることも多い
- 準インターネット人(Semi Internet People)
- 正インターネット人と同じタイミングで「仕事上の必要に迫られてオンラインの世界にやってきた」人々。その後少しずつオンラインでニュースを読んだり、情報を検索したり、買い物をしたり、旅行の計画を立てたりしていく
- 正インターネット人特有の文化的特徴はまったくといっていいほど受け継いでいない。インターネットを社会生活の場と捉えていない
本書の説明を読んで、フト気づいたことがある。
会社組織にいる多くの人は「準インターネット人」なのだ。
会社組織にいる多くの人は「準インターネット人」
先日Twitterでもこんなことを言った。
自社でテックブログが始まった(https://t.co/NQBA5YP4YK )というか始めたのだけれども、自社メンバーの仕事語りがいろいろ読めて興味深い。社内でプレゼン情報共有するより、まとまった文章で共有したほうがいいな(好みの問題)
— Kent Ishizawa (@agnozingdays) 2021年12月15日
それぞれの会社やチームの文化に依存するとは思うのだけれども、一般的な企業にいる多くの人は前述の「準インターネット人」であるというのは、良い補助線が引ける発想だと考えている。
常々、私は以下のような不満を持っていたのだけれども、その理由は他の皆が「準インターネット人」だからなのである。
- テキストでのやり取りが下手
- 非同期コミュニケーションが下手
- フォーマットの決まっていない非定型文書(レポートとかコラム)での情報共有が苦手
- 不特定多数への情報発信を嫌う
- テキストよりプレゼンテーション
- テキストより発話
なんでできないんだよ!と思っていたのだが、「準インターネット人」という特性によるものだったのである(なお「準インターネット人」が悪いとか下等という意図はまったくない点に注意。上でも下でもなく、特徴の話である)。
「準インターネット人」をトランスフォームすることは出来るのか
別に所属組織に明確な方針があるわけではないのだけれども、個人的には「準インターネット人」をトランスフォームというかアップグレードしたほうが良いと考えている。ソフトウェア開発の現場は急速にオンライン化が進み、対面コミュニケーションの機会は大きく減った(もちろんWeb会議などはいっぱいあるけど)。その中で、インターネット的なコミュニケーションが上手になったほうが良いに決まっていると思うのだ。
今回、所属企業ではテックブログをやっと始めることができたわけだが、これをきっかけに多様なメンバーが不特定多数に情報発信できるようになりそうなのはとても良いことだと思っている。自社であっても相応の人数がいると知らん人もいるわけで、そういった人の興味や活動や得意技が共有されるのを読むのは普通に面白いし、発見もある。
そういう意味では、 「準インターネット人」のトランスフォームの手段の一つとして技術ブログは良さそうという事がわかったわけだけれども、他にはどんな手があるだろうか。このあたりについてはもうすこし考えてみたいと思っている。何かいいアイデアないですかね。
参考
- テックブログ始めました。 - 電通国際情報サービス TechBlog
- 私も執筆しています。テックブログなのにテックじゃない内容だけど……