勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

Glenn Vanderburgの「Real Software Engineering」講演(2017)を見る

デッドライン読書会という企画で「継続的デリバリーのソフトウェア工学 もっと早く、もっと良いソフトウェアを作るための秘訣」を読んでいる(4月に入ったら感想を書く予定)。同書で紹介されていたGlenn Vanderburgの「Real Software Engineering」講演(2017)が面白そうだったので視聴してみた。講演はYoutubeで公開されている。同書の主張と同じく、この20年間の「ソフトウェアエンジニアリング」は誤っているという話である。

グレン・ヴァンダーバーグ(GlennVanderburg)は、“RealSoftwareEngineering”と題したすばらしい講演のなかで、ほかの分野では「工学とは役立つもの」なのに、ソフトウェアではほとんど逆だったと言っています。ヴァンダーバーグは、そうなる理由をさらに掘り下げていきます。アカデミックなソフトウェア工学のアプローチは煩雑すぎて、実践してみた人はみな、将来のプロジェクトで使うことを勧める気になれなかったというのです。ソフトウェア工学は、重々しいくせにソフトウェア開発のプロセスに大した付加価値を与えてくれるわけではありませんでした。
継続的デリバリーのソフトウェア工学 もっと早く、もっと良いソフトウェアを作るための秘訣 (P.43)

vanderburg.orgwww.youtube.com

視聴した感想

主には以下のような話である。

  • これまで主流だったソフトウェアエンジニアリングは実際には「アカデミック・ソフトウェアエンジニアリング」であった
  • 「アカデミック・ソフトウェアエンジニアリング」には誤謬があった。前提としている「合理的なモデル」は実際にはカリカチュアでしかなく、実際のソフトウェア開発ではうまく活用できなかった
  • そもそも、「アカデミック・ソフトウェアエンジニアリング」では「エンジニアリング」に関する誤解がある

上記について、様々な事例の紹介をふまえて説明されており、興味深い内容である。
ただ、基本的には「継続的デリバリーのソフトウェア工学 もっと早く、もっと良いソフトウェアを作るための秘訣」の第1章~第2章で語られている事と同じでもあるので日本語での読みやすさを考えれば、本を読んだ方が早いかもしれない。


ブルックスの「デザインのためのデザイン」が紹介されていて懐かしかった。この本は好きなんだけど、絶版であり残念だ。

終盤でGlenn Vanderburg氏は次のように結んでいる。「アカデミックソフトウェアエンジニアリングは、間違った目標を掲げて間違った方向に出発してしまった。アジャイルは、私たちの分野に適した適切な規律と実践で、正しい目標を念頭に置いて出発したのだ」

www.theatlantic.com