勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

我々はこのシステムを完成させていいのだろうか?

医療関係のコミュニティが公開している動画が興味深かったので感想などを書く。電子カルテの導入の現場における失敗パターンのようなお話。15分程だし、見ていて損は無いと思う。

我々はこのシステムを完成させていいのだろうか?

上記の動画の前半では、『ベンダーと担当者のコミュニケーションギャップなどが原因で予定通りに開業できなさそうな病院の現場を前に、悪戦苦闘』した後、ふとこんな想いが去来するという話が紹介される。『我々はこの病院を無事に動かしていいんだろうか?』

ソフトウェア開発の現場でも、トラブル化したプロジェクトで同じような思いに囚われてしまうエンジニアは多いのではないかと思う。

  • 自分ががんばらなければ、プロジェクトが失敗し、それが会社や上司を告発することに繋がるのではないか?
  • 自分ががんばってしまうとお客さんは喜ぶけど、組織が犯したミスが隠蔽されてしまうのではないか?

わりと倫理的な問題だと思うけれども、結論から言えばプロフェッショナルなエンジニアであれば、まず成功するための努力を行うのが当然だと思う。その上で、結果はどうあれ「本来はどうすれば良かったか」について事実を収集し、文書化し、きちんと報告すべきなのだ。ゆめゆめ、プロジェクトを破壊することで表現しようなどとは思ってはいけない。

原則2 顧客ならびに雇用者
ソフトウェア・エンジニアは,公共の利益と調和しながら,顧客と雇用者の最高の利益を実現するよう行動すべきである。特に,ソフトウェア・エンジニアは,その職に就く者としてふさわしく,以下のように行動すべきである:
(中略)
2.06. プロジェクトが失敗する可能性が大きい,あまりに高額になることが判明しそうである,知的財産権法を犯しそうである,あるいは何か問題がありそうだと自らが考えた場合,すみやかにそれがどのようなものであるかを確認し,文書化し,証拠を集め,顧客あるいは雇用者に報告する。
ソフトウェア工学の倫理ならびに専門技術者実務綱領