勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

最近読んだフィードバックに関する本を3冊紹介する

先日読み終わった「みんなのフィードバック大全」が面白かったのだけれども、ふりかえってみるとフィードバックというテーマの本は他にも何冊も読んでいた。おそらく深層意識のどこかでフィードバックに関する課題感を感じているのだろう(大げさ)。復習も兼ねて、最近読んだフィードバックに関する本を整理してまとめておこうと思ったのだ。

目次

みんなのフィードバック大全

みんなのフィードバック大全
SAP Concerという経費精算システムを販売するコンカーの日本法人社長が執筆した書籍。SNSのタイムラインで絶賛されていたので手に取った本。本記事で紹介する他の2冊はマネージャー向けであるのに対して、本書はマネージャー以外の若手にもおすすめしたい本である。著者もそう考えているようで、タイトルに「みんなの」とあるのはその意思の表明とのこと。

  • コンカー日本法人の設立直後は組織作りが後手に回ってしまい苦戦。方針を見直した結果、日本における「働きがいのある会社」で表彰されるようになった。
  • 現在は本業とは別に、働き方に関する施策や取組みを研修として提供している。その中で最も注目されている「コンカー流フィードバック」を書籍化したのが本書。
  • ベースとしては著者のマッキンゼーでの学びがある。
  • 参考

本書が良いのは、マネージャーの立場だけでない形で、様々なフィードバックの方法がフレームワークと実例で紹介されているところだ(ちゃんと大全になっている)。
特に「部下から上司」「同僚間」でのフィードバックの事例は参考にしたいし、いろいろ考えるきっかけになる。
実際に本書のプロローグでは、著者の三村氏がマッキンゼー新卒2年目の若手社員からフィードバックされる場面が紹介されるが、これはけっこうインパクトがある。

「ビジネスの経験は大切です。ただ経験だけに頼って考えたり話したりするのでは、マッキンゼーコンサルタントとしては不十分だと思うんです。経験に頼るのではなく、〝ファクト〟と〝ロジック〟で話す。そこに経験を裏打ちする。そこを意識すれば、三村さんはもっと強くなれると思うんです」
みんなのフィードバック大全 プロローグ、より

新卒2年目の若手社員が、他社から転職してきた10歳以上年上の著者に、こんなことを言うのである。
これをコンカーでは組織的に常時やれるようにしたとのことで、それは強いだろう。真似したい。

フィードバック入門~耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術

フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書)
以前に本ブログのこの記事でも取り上げたのだが、「ヤフーの1on1」という書籍(この本もオススメ)で、「この本を超える参考書はたぶんない」などお激推しされていたのが本書、フィードバック入門である。新書なので忙しいビジネスマンにとっては有難いコンパクトな本でもある。こちらはマネージャー、管理者、人事部や経営者向けの本である(実際に著者もそう言っている)。

本書の特長は、
①部下育成やフィードバックの基礎的な理論、学問的な知見(科学知)
②現場のマネジャーからヒアリングを通して抽出した実践的な知見(実践知)
この二つをバランスよく盛り込むことを意識している点にあります。
フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書) はじめに、より

キーワードは「育成」である。本書はコンパクトながらも、「なぜ部下が育たないのか」という課題に関する社会史的な分析に始まり、「部下育成のためのフィードバック理論」を説明し、さらに実践編+タイプ&シチュエーション別FAQまでついているという密度で、持っていると非常に心強い教科書という感じだ。またロジックが明確なので、例えばリーダーを部下に持つ管理職にとっては特に心強い本だと思う。

GREAT BOSS~シリコンバレー式ずけずけ言う力

GREAT BOSS(グレートボス) ―シリコンバレー式ずけずけ言う力
邦題がおかしい本(そして机の上に出しておくと同僚にハラスメントの疑いをもたれる本)。原著はタイトルは「Radical Candor(徹底的な本音)」である。率直なフィードバック(時には厳しいことも言わなければならない)について書かれている本である。現代の技術者マネジメントの教科書だと勝手に思っている「エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法」でもおススメされている。

フィードバックを伝える最良かつ簡潔なアドバイスは、徹底的な本音です。同じ名前の本になっています。スタッフと話すときに、話すべきこと、話すべきでないことを示しています。
エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法 「3章 人間と関わる」3.1.4 フィードバックをするには、より

この本を紹介するのはネタでもオチでもなく、大真面目にオススメできる本である。マネージャーおよび人事担当者向けである。

さて本書は(シリコンバレー流という前提付きで)良い上司になる方法、具体的にはメンバーとの信頼関係を構築して、徹底的な本音で語り合うことを推奨する本である。けっして部下を「詰める」本ではない。著者は起業に失敗した後にグーグル、そしてアップルに入社後はリーダーシップ教育を実践してきた方である(現在は独立)。シェリル・サンドバーグが大学院の同級生だそうだ。
翻訳書という点では注意は必要だろう。米国におけるマネージャーと、日本における管理職では人事権等も含めた裁量が異なる。ただそれを差っ引いても学ぶべき事が多い本である。

まとめ

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以前にはこんなことを考えていた
agnozingdays.hatenablog.com