勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

Building successful communities of practice 読んだ

Building Successful Communities of Practice: Discover How Connecting People Makes Better Organisations (English Edition)
チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計」で紹介されていた「Building Successful Communities of Practice: Discover How Connecting People Makes Better Organisations (English Edition)」が気になったので調べてみたら、良さそうだったので購入して読んでみた話。CoPという概念は実はよく知らなかった。
どんな本なのかを知りたければ、以下の動画をざっと見るのが良さそう(私はこの動画を見てから購入することにした)
youtu.be

チームトポロジーではこんな感じで紹介されている。

イネイブリングチームもコミュニティオブプラクティス(CoP)も、他のチームが持つ能力を向上させ、またチームが持っている能力を広く知らしめるのに役立つ。イネイブリングチームのメンバーはフルタイムで活動する。CoPは組織内のさまざまなチームから関心を持つ個人が集まり、毎週もしくは毎月、プラクティスの共有ややり方の改善を行うことが多い。エミリー・ウェッバーは、著書『Building Successful Communitiesof Practice』のなかで、「コミュニティオブプラクティスは、社会的学習、実験的学習、バランスの取れた学習が行いやすい環境を作り、メンバーの学習を加速する」と言っている。
チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計 Chapter.5 4つの基本的なチープタイプ

この記事の目次

Building successful communities of practice の全体的な感想

  • 2016年に発売された94ページの薄い本。さらっと読める。Kindle Unlimitedな人は無料で読める。英語。
  • ひとことで言うと、「組織内に自律的に活動する実践コミュニティを人工的に生み出す方法について書かれた本」である。
    • 日本的なイメージだと「〇〇勉強会」みたいなものをうまく組成し、継続的に活動するようにする方法という感じ
    • でも、これはものすごく難しい事でもある。マネジメント的立場だと、この手のコミュニティはたくさん生み出したいところなのだが、実際は運まかせのチャレンジであることが多い
    • たまたま課題とリーダーシップをもつメンバーと雰囲気が核融合すると良いコミュニティが生まれるのだけれども、打率はだいぶ低い印象
    • またコミュニティを長期間維持するのも結構難しい。音楽性の違い問題などもすぐに発動する
  • というわけで実は「人工的にコミュニティを(意図的に)作る」ことに書かれた本書は、個人的にはいろいろと示唆があって刺激的だった

組織設計で頭を悩ませるマネージャーとか、コミュニティづくりに苦労している人にはおすすめのような印象

抜き書きメモ

以下は気になった箇所に関する抜き書きメモ。気になる箇所があれば原著をあたっていただきたい。

Introduction

  • "組織の構造や文化が急速に変化する時代に、人々がつながりサポートされていると感じるようにすることは、これまで以上に重要です"
  • Communities of Practice(CoP)の定義

1. Why You Need Communities of Practice in Your Organisation

ほぼ前述で紹介した動画の内容が書かれている章。

  • CoPの利点
    • 組織横断的な専門性の開発促進
    • 組織内サイロの打破
    • 知識と良いプラクティスの共有
    • 良いチームを雇用し、作り出す
    • 人々のモチベーションおよび幸せの向上

2. The Stages of a Community of Practice

3. Creating the Right Environment

  • コミュニティを成功させるために必要な環境とは何か
    • 定期的に集まる(信頼を構築するために)
    • 適切なコミュニティーリーダーシップ
    • 安全に失敗学習できる環境
    • 組織サポート(時間、ヒト、カネ)

4. The Leadership of a Community of Practice

  • コミュニティリーダーシップの役割
    • コミュニティの構築、維持、発展
    • ヒト、およびダイナミクスの管理
    • コミュニティの支援、ファシリテーション
    • 知らせる、助言する、コーチングする
    • 専門的な方向性と標準を定義する
    • 内外組織に対して代表として振舞う

5. Identifying Who is in the Community

  • CoPの始め方
  • 最初のメンバーをどう見つけるか
    • 目的、チャレンジ、学習、教える事に関する質問で適任者を確認する

6. Becoming a Community

余談だが、紹介しているアイスブレークテクニックの1つ”Top Trumps"がかなり興味深い~

7. Getting Value from Community Interactions

コミュニティ活動から価値を生み出す方法について。単なる会合をどう脱するか

  • 人脈をつくる
  • グループ学習(発表、素振り、ゲームとワークショップ、見学ツアー)
  • ディスカッションによる問題解決と良いプラクティスの構築
  • コミュニティ外への共有
  • コミュニティの改善(振返り)

このあたりは自分にとっては社内外のコミュニティで実践してきたところでもあるのだけれども、こうやって構造化、明文化してみると見通しが良くなってすばらしいと思った。定跡として使いまわしたい。うまくいったり、うまくいかなかったりするのだ……その理由がわかったかも

8. Identifying Skills Gaps to Work On

  • 前章で紹介した振返りなどで構築したバックログを参考に、コミュニティおよび個人のスキルギャップを識別して改善していく話

ドレイファスモデルを久しぶりに目にした。興味がある人はオライリーで無料ダウンロードできる、リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法の第1章を見ると良いだろう。

9. Growing the Community of Practice

コミュニティの育て方

  • メンバーシップの拡大
  • メンバーのタイプを理解する(コア、アクティブ、ノンアクティブなど)
  • コミュニティリーダーを見つけ育てる
  • リーチを拡大する

10. Self-sustaining Communities of Practice

自立した実践コミュニティ(CoP)をつくるには