勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

ビッグテックのエンジニアリングカルチャーについて書かれた本

わりとビッグテック(GoogleとかAppleとか)のエンジニアリングカルチャーには興味があって色々と本を読んだり探したりしているのだけれども、いろいろ取っ散らかって来たのでいったんまとめてみる記事です。どうでもいいけどFacebookがMetaになったせいで、便利な略称が崩壊しているのはちょっと面倒ですね。GAFA(GAMA?)とかFAANG(MANGA?)とか。

Googleのエンジニアリングカルチャー

Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス
最新のものとしては「Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス」が一番まとまっている。原著は2020年、邦訳は2021年に出た本。
自分は原著をざっくり読んでいる。

どんな内容が書かれているかは、オライリージャパンのサイトにある目次を見ると良い。

Google内部で利用しているソフトウェアについては「SRE サイトリライアビリティエンジニアリング ―Googleの信頼性を支えるエンジニアリングチーム」(原著2016、邦訳2017)でいろいろと紹介されている。原著は英語で読める。

古いけれども、Googleにおけるテストエンジニアリングについて書かれた「テストから見えてくるグーグルのソフトウェア開発」(原著2012、邦訳2013)も面白い。ただし本書で書かれていることはすでに実践されていないという事も本書には書かれてたと記憶している。
エンジニアリング部分にはあまり触れていないけど、人材管理については「ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える」(原著2015、邦訳2015)ですこし紹介されている(360度評価のシステムなど)。

他にもいろいろあるけれども代表的なものはこんなところだろうか。
記事執筆時点では自分は未読だけれども「Building Secure and Reliable Systems: Best Practices for Designing, Implementing, and Maintaining Systems」には最新情報が書かれているかもしれないと思っている。そのうち読みたい。

Appleのエンジニアリングカルチャー

Creative Selection Apple 創造を生む力
スティーブ・ジョブズの伝記類はいっぱい出ているけれども、エンジニアリング関連の情報はあまり公開されていない印象のAppleだが「Creative Selection Apple 創造を生む力」(原著2018、邦訳2019)はけっこう踏み込んだ内容が書かれて面白かった。最初のSafariiPhone開発に関与した人が書いた本である。

他にもあるかもしれないけど、現時点では発掘できていない。

Meta(旧Facebook)のエンジニアリングカルチャー

Move Fast: How Facebook Builds Software (English Edition)
断片的にネットで紹介されることはあっても、まとまった情報の出てこないFacebookであるが、「Move Fast: How Facebook Builds Software (English Edition)」(原著2021、未訳)で社員へのインタビューのまとめとして書籍化されている。この本はモバイルシフト直前から、モバイルアプリにシフトした時期のFacebookについて語られているもので興味深い。
ちなみに同書の目次はこんな感じ。

  • Part 1: Product
    • 1. Pivot
    • 2. Portfolio Management
    • 3. Threats
    • 4. Experiment and Iterate
  • Part 2: Culture
    • 5. Something Happens
    • 6. Individuals
    • 7. Bootcamp
    • 8. Social Cohesion
    • 9. Code Wins Arguments
  • Part 3: Technology
    • 10. Cross-Platform
    • 11. Release Engineering
    • 12. Networking
    • 13. Rethinking Best Practices
    • 14. Frontend
    • 15. Facebook Moore’s Law

書籍を購入せずとも、著者のオーディオブック版が公開されているようだ(私はKindle版で読んだ)

Amazonのエンジニアリングカルチャー

さて、それではAmazonはどうだろう。私の知る限り(ベソスの伝記などを除外すると)あまり見当たらないように見える。

Amazonのエンジニアリングカルチャーが垣間見えるネット文書としてはスティーブ・イエギの「プラットフォームぶっちゃけ話」というものが有名である。こちらについては以下で紹介した。

他にはなにかあるのかなぁ。

Netflixのエンジニアリングカルチャー

お次はNetflixなんだけれども、こちらも残念ながら私の知る限りエンジニアリングカルチャーについて書かれた本などはないように見える。
カルチャーに限って言えば「NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX (日本経済新聞出版)」(原著2020、邦訳2020)という本が有名なんだけれども、あんまりエンジニアリングって感じはないんだよなぁ。
NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX (日本経済新聞出版)

Microsoftのエンジニアリングカルチャー

最後はMicrosoft。古代のMicrosoftのエンジニアリングカルチャーといえば「闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達」(原著1994?、邦訳1994)という泣く子も黙る名著があるのだけれども、いかんせん古い。同書はWindows NT開発に関する文書である。
闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達

その後のMicrosoft内部の開発の情報はネットに散らばっていて、書籍という形ではまとめられていないような気がする(見落としているかもしれないけれど)

Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) マイクロソフト再興とテクノロジーの未来」(原著2017、邦訳2017)はたいへんに面白い本なのだけれども、これもカルチャーについては語られていてもエンジニアリングに関する言及は薄かったような気がする。
Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) マイクロソフト再興とテクノロジーの未来


マイクロソフト 再始動する最強企業」(和書2018)は未読なんだけれども、ちょっと違いそうだなぁ。

というわけで雑に整理してみたけれども、AmazonNetflixMicrosoftについてのエンジニアリングカルチャーについて書かれた本というのは見つからなかったということになる。それぞれ特色もあって、読んだら面白いと思うんだけれどもなぁ。もし何か良い本などをご存知だったら、教えてもらいたいものである。
Googleは立派というか、やはり余裕があるのだろうか。それともアウトプットする文化なのかもしれないが、いろいろまとまっていて素晴らしい。