「ビヨンド ソフトウェア アーキテクチャ」に関する読書メモ。ソフトウェアアーキテクチャ全般に興味があるので手に取ったのだけれども、同書はざっくり言えばパッケージソフトウェアの作り方に関する本である。なんとなく、このタイトルでは必要な人の手に渡らないような気がするのだけれども。なお同書のKindle版は2/25まで50%オフのセール中なので興味のある方はお早めに判断を。
ビヨンド ソフトウェア アーキテクチャ Object Oriented Selection Classics
- 作者: ルーク・ホフマン
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2015/10/01
- メディア: Kindle版
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「ビヨンド ソフトウェア アーキテクチャ」
翔泳社さんの書籍紹介は次のように書かれている。
「アーキテクチャ」について技術的な観点から書かれている本は数多くありますが、ビジネスの視点からシステムを商品として見た時に考えるべきことを教えてくれる本が、実はありませんでした。本書は、アーキテクチャにおけるビジネス(マーキテクチャ)と技術(ターキテクチャ)をつなぐ架け橋として、情報システム部の方全員に読んでほしい本(情シス必読書)です。エンジニアにとっては、マーケティングの基礎を学ぶ上でも役に立ち、かつ、技術面でのアーキテクチャ論としても、経験豊富な著者の実体験に根ざす優れた考察に富んだ一冊となっています。
上記はちょっとミスリードがあると思っている。本書は「ソフトウェア製品開発に関わるアーキテクト」が想定読者になるのではないだろうか。そういう意味では、ユーザ企業の情報システム部門に所属する人(買い手)というよりは、ソフトウェア製品開発(作る人)に関わる人に読んでおいてほしい内容だと思う(あくまで個人的な感想)。
さて、本書の基本的な骨組みは上記紹介にも書かれている通りだが、
である。
本書では、ソフトウェアアーキテクチャという枠組みを越えてソリューションをうまく構築するために、幅広いビジネス課題とアーキテクチャ上の選択との関係について議論する
ビヨンド ソフトウェア アーキテクチャ Object Oriented Selection Classics まえがき、より
ソフトウェアアーキテクチャについて言及することもあるし、技術的な課題を議論する場合もある。だが、私が集中して議論したいのは、アーキテクチャを図示あるいは文章化する最善の方法や、堅牢で、分散化されたWebコンポーネントシステムに関連する深い設計原理などではない。
ビヨンド ソフトウェア アーキテクチャ Object Oriented Selection Classics まえがき、より
ビヨンド ソフトウェア アーキテクチャ Object Oriented Selection Classics 目次
- 第1章:ソフトウェアアーキテクチャ
- 第2章:プロダクト開発入門
- 第3章:マーケテクチャとターキテクチャ
- 第4章:ビジネスとライセンスモデルの共益関係
- 第5章:インライセンステクノロジー
- 第6章:可搬性
- 第7章:デプロイメントアーキテクチャ
- 第8章:統合と拡張
- 第9章:ブランドとブランド要素
- 第10章:ユーザビリティ
- 第11章:インストール
- 第12章:アップグレード
- 第13章:コンフィギュレーション
- 第14章:ログ
- 第15章:リリース管理
- 第16章:セキュリティ
- 補遺A:リリースチェックリスト
- 補遺B:戦略的プロダクトマネジメントのためのパターン言語
ソフトウェア開発の上で必要な「マーケテクチャ検討上の重要な観点」というのが曲者であり、また本書の整理が非常に有効なポイントである。
ソフトウェアを構築するために必要な意思決定の多くはアーキテクトが利害関係者との調整において合意形成するものだが、ソフトウェア製品については「顧客」という最も重要な利害関係者が不在なのである。ではどうするか?というのが本書の主眼であると思う。
また、世の中一般で最も多い「自社利用のシステム構築」と、「販売するためのシステム開発」では根本的に異なる点も多い。
- どのようなライセンスモデルで販売するかと、そのライセンスモデルを実現するための機能要件は何か
- 利用しているサードバーティ製品やOSSのライセンス管理はどうするのか
- どのような環境をサポートするのか
- オンプレミスかサービス提供か
- 他システム連携の考慮はどうするか
- インストール、アップグレード、コンフィグ設定はどうするか
こういった観点が、本書のような形でとりまとまっているのは本当に有難い。
個人的には、何年かごとに製品開発にも関わってきているので、本書は非常に参考となった。
プロダクトとしてソフトウェアを出荷するような形で仕事に関わる方におすすめ。