無料で公開されている電子書籍「メイカーズ(コリイ・ドクトロウ)」を読んだ感想。普通に書店で売れるくらいのクオリティとボリュームでびっくりした。そして、とても面白い。話題のメイカーズムーブメントの現在(そしてちょっと未来)に触れる良い小説だと思う。
ふたつの「メイカーズ」
メイカーズというと、2012年に出版されたクリス・アンダーソンの「MAKERS」を思い起こす人のほうが多いだろう。

- 作者: クリス・アンダーソン,関美和
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/10/23
- メディア: 単行本
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同書はノンフィックションであり、メイカームーブメントそのものを取り扱いつつ、筆者であるクリス・アンダーソンの起業(ラジコン飛行機の製造キットと部品を製造販売する会社を立ち上げている)経験について書かれている。
しかし、同書で書かれた世界は実は2009年にSF小説としてすでに予言されていたというのだ。そのSF小説が、コリイ・ドクトロウの「メイカーズ」である。
現実と非現実の狭間
実は今回、あまり内容をチェックせずに無料だからという理由で本書を(Kindleで)読み始めたのだけれども、実は本書がフィックションだと気づいたのはずいぶんと後だった。最近読んだ「Yコンビネーター」やら「ツイッター創業物語」などと変わらなくリアルな物語になっている。
- 語り手は、シリコンバレーで働く新聞記者兼ブロガー
- 巨大企業を買収した起業家の依頼で、いわゆるメイカーズなハッカーを取材することに
- これまで廃材をハックして美術品をオークションサイトで売っていたハッカー達が、メイカーズとして起業
といった展開が非常にリアルに、そして本当に現実で行われているように描かれている。そして、とてつもなく楽しそうである。
私たちだけではありません。テクノロジーはあらゆる部門のビジネスに戦いを挑み、殺し続けてきた。くそったれなIBMは今やコンピューター製造を行なってはいません!旅行代理店などという概念は今では想像もつかないほど奇妙なものに変わってしまった!それにレコード会社です。ああ、正気を失い自滅へとひた走る哀れで愚かなレコード会社。これ以上、私に言わせないでください。
メイカーズ 第一部 第一章
割とものすごいボリュームな気がするのだけれども、一気に読んでしまった。
というわけで、クリス・アンダーソンの「MAKERS」を読んだ人には間違いなくお勧め。むしろこっちのほうが面白い。
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