勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

リーダーシップが滅ぶ時代

読書メモ。どうしてこの本を読もうと思ったのかがすっかり思い出せないのだけれども、未読リストに入っていたので読んだ。着眼点は面白いのだけれども、読書体験としては微妙な感じ。とはいえ、いろいろ考えさせられるポイントは多い。

リーダーシップが滅ぶ時代

本書は「リーダーシップビジネスに携わっていた著者が、リーダーシップビジネスの問題を告発する」といった筋書きである。要点は「リーダーシップとフォロワーシップの関係性が大きく変化している。この関係性の変化にリーダーシップビジネスは追随できていない」というもので、これが延々と歴史的経緯とアメリカ政治の変化などによって説明されるのだが……そこは正直読んでてつまらなかった。

とはいえ、「リーダーシップとフォロワーシップの関係性の変化」「フォロワーの力の増大」といった観点は興味深い考え方だと思う。

「フォロワーとしての私は、あなたが契約を守る限り、リーダーとしてのあなたが望むことを行う。あなたがある程度正直で有能である限りは。だが、もしそうでなければ、私たちの契約を保つのは難しい。そのような状態では、私はあなたに忠誠心を持つことはないし、支える義務もない」
ハーバード大学特別講義 リーダーシップが滅ぶ時代

ソフトウェア開発の世界では

上記はいわゆるコンシューマの世界の話しなのであるが、ソフトウェアの世界はこれよりも一回り早く、リーダーとフォロワーの逆転が起こっているように思う。

  • 情報のオープン化や、高速な技術進歩によりフォロワーであるエンジニアが非常に強い力を得ている
  • 相対的にピラミッド型組織のリーダーシップが弱体化、無力化
  • 景気の低迷などの経済状況に加えて、多様なキャリアが生まれた結果、既存の企業に縛られる必要性が下がった

また、強力なリーダーシップ無しでソフトウェア開発を推進する方法論(アジャイル開発プロセススクラム等)などが流行っているのも、「リーダーシップとフォロワーシップの関係性の変化」「フォロワーの力の増大」という観点から見ると興味深いと思う。