文書のタイトルだと何の本なのか分かり難いのだけれども、人間の脳の意思決定について書かれた本「ファスト&スロー」を読み終えたのでそのメモなどを。いろいろな読み方があるのだと思うけれども、自分にとってはオッサン化した自分の頭脳をデバッグするような気持ちで読んでいた。ちなみに、Kindle版を購入。
達人(または上級者)を目指して
ブログで何度か取り上げている、Andy Huntの「リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法」ではこんなことが書かれている。
達人になりたくありませんか? 正しい答えが直感でわかるようになりたくはありませんか? さあ、一緒に達人への旅に踏み出しましょう。この章では、初心者であることの意味、達人であることの意味―そして初心者と達人の間に位置するすべての段階の意味―について考えます。物語はここから始まります。
リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法 1章 初心者から達人への道、より
リファクタリング・ウェットウェアで書かれる「達人」とはこんなものだ。
- 経験を重ねることによって「直感力」を磨く
- コンテキストの重要性の認識、および状況のパターンに対する重要性の認識する
自分の経験からも、技術者としてもこの考え方には納得がいったし、わりと参考にしてきた。
やがて、自分が達人(または上級者)になったのかはわからないが、経験と年齢を重ねて、いまではいろいろなことを判断したり決定するようになっている。しかし、それがどれほどいい加減なものか、ということを改めて教えてくれるのがこの「ファスト&フロー」という本だ。
自分の判断を疑う
本書は、いかに人間の脳による意思決定があいまいかについて、様々な実験とあわせて説明してくれる本である。
- われわれの脳はどのような錯覚を起こしやすいのか
- 意思決定は、どのような刺激に誘導されやすいのか
- 見た目に意思決定がどのように左右されるのか
- どんなときに、思考を飛ばして結論を導いてしまうのか
- 難しい問題に直面した時に、いかにして手抜きの結論を導き出してしまうのか
自信を持つことはたしかに大切ではあるが、私たちが知っていることがいかに少ないかを考えたら、自分の意見に自信を持つなど言語道断と言わねばならない
ファスト&スロー (上) 第20章 妥当性の錯覚 ――自信は当てにならない、より
稀な事象に関する限り、私たちの脳は正しい判断を下すようにできているとは言いがたい。
ファスト&スロー (下) 第30章 めったにない出来事――「分母の無視」による過大な評価、より
もちろん本書を読んだからと言って、自分の意思決定のレベルが向上したり、誤りをおかしにくくなるということは無い。しかし、自分の脳―思考エンジン―の特性を知ることに悪いことはない。
「おっさん」になって、いろいろな判断に自信をつけてしまった自分の頭を、テストしてみるつもりで読んだら面白いと思う。