勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

いまさら「モチベーション3.0」を読んだ

読書メモ。いまさらなのだけれどもダニエル・ピンクの「モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか」を読んだ。きっかけは先日ブログでも取り上げたソフトウェア開発マネージャの選書リストである。これを書いていて、未読であることに気づいて手にとった次第。なお、要旨は有名なTEDの講演で20分弱で確認できるので未見・未読であればこっちを見ておけばいいような気もする。

ソフトウェア開発エンジニアとマスタリー(熟練)

本書は既存のアメとムチによる管理(=モチベーション2.0)から、「自律性」「マスタリー(熟練)」「(大きな)目的(意識)」を中心とした動機付け(=モチベーション3.0)への移行について書かれた本だと考えている。各論ともに興味深いのだけれども、ソフトウェア開発エンジニアにとっては「マスタリー」というキーワードが一番気になるところである。

  • プロジェクトからの学び、プロジェクト以外からの学びの両輪で考える
    • ソフトウェア開発プロジェクトは割と自由度が高いので、学ぼうとすればいくらでも学べるものだと考えている。
    • プロジェクト以外からの学びは、「プロジェクトでは出来ないこと」や「いきなりプロジェクトで採用するのは難しいこと」を選択するようにしている。社外勉強会などを活用しても良いし、個人で独学で技術検証をしたりすることも出来る。
  • 熟練することを長期の目標として置く
    • 熟練者を目指して、自らの専門性の向上と維持を考える
    • 熟練者を目指して、後進の育成を考える

本書を読みながら、わりとこんなことを考えたのであった。

複雑な問題の解決には、探究心と、新たな解決策を試そうとする積極的な意思が必要だ。〈モチベーション2.0〉が従順な態度を求めていたのに対し、〈モチベーション3.0〉は積極的な関与を求める。それだけがマスタリー、すなわち物事に熟達することを可能とする。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか 第5章 マスタリー(熟達)、より

ソフトウェア職人の管理は、ソフトウェア・エンジニアの管理とはまったく異なったものです。西洋社会におけるデフォルトの管理形態として用いられてきたネオ・テイラリズム・モデルでは、作業を実行するための「唯一最良の方法」(one best way)は管理者が握っているという前提が置かれていました。下働きは管理者から命令されたことを実行するためだけに存在しているのです。
この「科学的管理法」は、Taylorの時代における石炭の採掘作業ではうまく機能するかもしれませんが、今日の製造業で効果があるかどうかは証明されていないのです。
ソフトウェア職人気質―人を育て、システム開発を成功へと導くための重要キーワード (Professional Computing Series) 第9章 職人の管理、より