勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

企業システムとノイラートの船

覚え書き。以下のブログエントリで使われている「ノイラートの船」という例えを私は知らなかったので調べてみたこと、考えたこと。

ベンダーとユーザーの最大のポジションの違いはこれになります。つまり大海原のど真ん中で自分で自分の乗っている船を修理して長い航海をしていく必要があるということです。これは内製化という側面に焦点をあてると、その様な物理的なたとえのみならず、積み重ねてきた基盤・経験・知識・人材を、を作り直しながらやっていかねねばならないという意味で、「まさにノイラートの船」でしょう。

絶えず自力で作り替える、それも人も物も組織も含めて、その上その作業そのものが常に政治リスクに晒される、こういったバランスを保つことが内製化のなのでしょう。非常にコストが高いですね。とはいえ、いままでノーリスク思考で、リスクをSI屋さんに丸投げしていたツケですよ、と言われてしまえば、そうですが。
内製化を巡る議論で〜内製化リスク再考。ノイラートの船にどう乗るのか? - 急がば回れ、選ぶなら近道

ノイラートの船とは

オーストリアの科学哲学者、社会学者、政治経済学者であるオットー・ノイラートの有名な言葉とのこと。

われわれは、乗船中の船を大海原で改修しなければならない船乗りの様なものである。一から組み直すことなどできるはずものなく、梁を外したら間髪入れず新しい梁を付けねばならないし、そのためには船体の残りの部分を支保に利用するしかない。そういう具合に、古い梁や流木を使って船体全てを新しく作り上げることはできるものの、再構成は徐々にしかおこなえない。
オットー・ノイラート - Wikipedia

ただ、上記だけを読むとネガティブな印象を持ってしまうが、実際にはポジティブな意味で書かれていることのようである。

ノイラートの船の比喩が含意しているのは、知識には土台は存在しないこと、また、全体が沈んでしまわないかぎり、部分的にはどの部分であっても修理をすることが可能であることである。
電撃かたつむり通信(仮) ノイラートの船

企業システムとその保守は本当に「ノイラートの船」なのか?

以下、冒頭で紹介した記事を読んで感じたこと

  • 企業システム内製化の果てを考えると「ノイラートの船」よりは「世代宇宙船」のことをイメージしてしまう。
    • 世代宇宙船 - Wikipedia
    • 『また、世代宇宙船は地球の文明の進歩から取り残されることになり、その出港後に画期的な超光速航法が開発され、後の宇宙船が追い越してしまうのではないか、という問題もある』(Wikipediaの上記記事より)
  • 実際のところ、長期的に見て内製化戦略を維持するというのは難しいのではないか。一定期間(メリットのある期間)は内製化を推進して、多様性や柔軟性が低下するタイミングで新技術による更改を行うというサイクルが繰り返されるような気がしている。