勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

音楽の所有をやめたことと、ケヴィン・ケリー〈インターネット〉の次に来るもの

ポエムの類。最近音楽の所有をやめたことと、最近読み終わったケヴィン・ケリー「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」について考えたこと。同書で語られるテクノロジートレンドは、割と実感に即しており、いろいろ考えさせられる。
ipod

音楽の所有をやめるまで

これを書くと歳がバレるのだけれども、高校生まではCDとWALKMAN類、学生時代と社会人数年間はMDが主な音楽の所有手段だった。で、社会人になって数年経ってデジタルオーディオプレーヤーが発売され、早い段階から使い始めてた。

最初に使い始めたのはHyperHyde ExrougeというMP3プレーヤーの名機で、すごく使い勝手が良かった。片っ端からCDをリッピングしてデジタル化しながら聞いていた。ただ容量が小さく持ち歩ける量はアルバム3-4枚程度。でも手軽さが何より素晴らしかった。それまでに溜め込んでいたカセットテープとMDはデジタル化出来ないので全部捨てたのもこのあたり。

ちなみにちょっと話がそれるのだけれどもMP3の誕生から普及に関する想像とは異なるドラマについて書かれた「誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)」はドキュメンタリーとしてめちゃくちゃ面白いので、この時代にCDをリッピングしてきた世代の方は一読をおすすめしておく。

次に買ったのが確かiPod Shuffleの第1世代(512MB)。最初は単に容量が大きい点が嬉しかったのだけど、この時点で蓄積された大量のデジタルオーディオからランダムな楽曲を転送して聞くことの楽しさがあった。音楽のライブラリ管理をitunesに移行したのもこのあたりのタイミング。

そして2007年くらいに世の中に遅れてiPod Classicを購入。たしか容量は80GBだったが、当時保有していた全てのデジタルオーディオを全て持ち歩けるようになった。振り返ると、このあたりが自分の音楽所有のピークだったような気がする。

その後スマートフォンを利用することになってiPodはいつの間にか使わなくなり、つい最近まではiPhoneに1GBくらい音楽を入れて持ち歩いていたのだけれども、先日ついにこれをやめた。音楽ファイルの同期をやめた。

で、今は何で音楽を聴いているのかというと

である。
自宅の母艦PCのHDDには約60GBのデジタルオーディオの蓄積があるけれども、今後これにアクセスする頻度はどんどんと下がっていくような気がする。

〈インターネット〉の次に来たもの

最近読んだ本でとても面白かったのが、ケヴィン・ケリーの「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」である。同書は技術そのものの持つ特性を考察することで、インターネットの次にどんなことが起こるのかを論じている。
たとえばこんな感じである。

所有することは昔ほど重要ではなくなっている。その一方でアクセスすることは、かつてないほど重要になってきている。
〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則 5.ACESSING、より

高度に進んだテクノロジーのおかげで、こうした魔法のようなレンタル店が実現する。それこそ、インターネットとウェブとスマートフォンの結び付いた世界だ。このバーチャルな棚は無限だ。この最大のレンタル店では、ごく一般的な市民がまるで自分が所有しているかのように、即座に商品やサービスを利用できる。これを利用する方が、自分が持っているものを地下室から探し出すよりも早い場合もある。しかも、商品の品質は自分で所有している場合と同じだ。アクセスする方が所有するよりも多くの意味で優れているので、それが経済を最優先で牽引している。
〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則 5.ACESSING、より

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

そして今まさに自分は音楽を所有するものから、アクセスするものに変えようとしている。その理由は同書に書かれているものとほとんど同じだ。

  • ローカルのライブラリを維持するのが面倒。頻度は高くないけど機器をリプレースする度にデータ移行しなければならない
  • 利用するのにローカルのライブラリにアクセスするのが煩わしい
  • 物理的なメディア(CDなど)の取扱いは面倒の極み。取り込んだ後の保管や廃棄など
  • デジタル音楽についても購入手続きが面倒→定額視聴最高
  • 新譜や話題の音楽に出会うための活動も省力化したい→radikoのタイムフリー視聴でチャート番組や好きなDJプレイを視聴

といった理由を考えて、思い切ってPrime Musicに移行したのだけれど今の所は不満なし。他の定額サービスに比べてレーベルや新譜のカバー範囲に制限は多いのだけど、自分の興味の範囲がそこに無いので問題なしだ(それでも聞きたい新譜があれば楽曲単位で購入すれは済むし)。

ちょっと悩ましいのは、所有からアクセスに方針を切り替えると、利用する際にはネットワークが前提となってしまうところである。まあモバイルという観点では最近は電波圏外も少ないし、WiFi利用可能な場所も多いから問題ないか・・・この間静岡から東名を走りながらPrime Music利用してみたけれども、まったく問題は無かった。

もちろん災害などでネット断絶など起こればアクセスできなくなっちゃうのだけれども、その時はその時だなぁと。以前の震災(いわゆる311)の際に計画停電などにより数時間の停電も経験したけれども、まぁその時には電池で動くラジオがあれば十分だった。

次は何がおこるのか

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」を読むといろいろな事が予想されているのだけれども、それが遠い世界の物事ではなく実感できる生活レベルで経験できるというのは非常に面白いと思う。また、これを実感として楽しめるのは現代に生きている世代の特権な気もする。本記事で取り上げた「Accessing」というキーワードだけでも、音楽だけでなく、どこまで「所有」から「アクセス(権)」に移っていくのか考えるのは興味深い。