XP祭り2014というイベントで発表された「俺の価値創造契約」というスライドが話題になっている。株式会社永和情報システムマネジメントさんが行っているソフトウェア開発の新しい契約形態が苦戦しているという話。いくつかの関連記事を読んで思ったこと。
公開されている事業計画と並べて読む
永和情報システムマネジメントさんのアジャイル事業部では、今年度の事業部計画書が公開(!)されている。こちらもあわせて読むと興味深いと思う。
うまくいっている(ように見える)ソニックガーデンさんの「納品のない受託開発」との大きな差異はやはり、
- 『仮説:システムの価値は、そのシステムがどれだけ長く使われたかではかれる』
という点だろう。ここに焦点を当てて所期費用0円+月額定額制の価格設定をしていると思われる。この仮説が縛りとなって苦戦していることは事業計画にも書かれていて察せられる。
当社のビジネス上の制約(解約されない長く使われるシステムをターゲットとすること)と価値創造契約に魅力を感じるターゲット(スタートアップのような事業)がミスマッチである。
理想は組合モデル?
事業部計画書の続きでは、「解約されない長く使われるシステム」というターゲットは変えないと述べられていることから、本来であればIPAが提起する「組合モデル型の非ウォーターフォール型開発(顧客との共同事業としてシステム開発から保守を実施)」に持ち込みたいのだろう。ただ、この組合モデルは絵に描いた餅で、実現のハードルはとても高い。顧客と共同で組合をつくるような関係を構築するのは、よほどの大手ベンダなどでないと無理だろう。というわけで、この組合モデルの特種解として価値創造契約は設計されているんだろうと思っている。
自分だったらどうするかを考えてみる
思考実験として。
- 『仮説:システムの価値は、そのシステムがどれだけ長く使われたかではかれる』を維持する事にする。
- 「現時点では存在しない、構築したら長期間利用されるシステム」または「既に長期間利用されているシステムのリプレース」をターゲットにする。
- 「現時点では存在しない、構築したら長期間利用されるシステム」を狙うなら・・・
- 「既に長期間利用されているシステムのリプレース」を狙うなら・・・
- 要はシステム更改を取りに行く。まず保守から有償で入りつつ、更改のための費用を抑えて更改しますよ・・・と。
- 情報子会社が本社と分離しているような会社が狙い目かもしれない。アウトソースしている先とか。利益向上というビジネス目標を共有しやすいし、本社ほどの体力が無いのでコストメリットの理解がされやすいかも。
いろいろ考えてみたけれども、業界における顧客の選択肢が増えることは素晴らしいことである。永和さんの今後の巻き返しを期待したい。