出版されてから随分経つけれどと、書籍「インパクトマッピング」を読んだ。マインドマップの文脈で、上位の階層に利害関係者が登場するのが特徴の価値のツリー構造といった印象。面白いけれど使いどころは難しいと思った。
インパクトマップの概略
ひとことで言うと「WHY→WHO→HOW→WHATの構造を持った仮説表現のマインドマップ」である。詳細は翻訳をされた平鍋さんのブログや講演資料が公開されているので参考に。
たとえばこれがインパクトマップである(平鍋さんの講演資料より)。
個人的に注目する特徴は、2層目にいきなりアクター(利害関係者)が登場しているところである。これを強制することがインパクトマップを特徴付けているように思う。
- 自然体で考えると、「ゴール→サブゴール→実現手段」といった連鎖を書くときにアクター(利害関係者)を意識することはあまりない。実現手段が決まったところで自然とアクターは決まるからだ。
- インパクトマップでは、アクターが上位に来ることで「アクターの行動を変えることで、ゴールを達成させなければいけない」という思考フレームが強制される。
- 「アクター中心」で考えることが、デザイン思考的なものの考え方を促している。
このマップは、一点突破のブレークスルー的な解決策を探索・発見するのは有用そうな印象である。ただ、アクター間に複雑な利害関係があったり、複合的な手段を同時に実行しなければいけない複雑なゴールを整理するのはちょっと難しそうな気がする。
マインドマップである必要はなさそう
ちょっと気になったのが、このモデルがマインドマップで定義されていることだ。
個人的には、こんな表形式の表現のほうが使い勝手が良さそうな気がする。
- マインドマップ、というかツリー構造を使う利点は自由に階層を深くしたり、レベルあわせをすることにあると思うのだけどインパクトマップはレベルが固定されている構造なのでツリーである意味があまり見出せない。
- 勝手な印象だけど、日本人的には構造の美しさとか配置にこだわってしまうのでツリーで見せると無駄な議論を生みそう。インパクトマップは特定の枝が深くなるような仕上がりになる(はず)ので、他の枝も深堀りしたい気持ちと戦う必要がありそう。
まぁ、自由に使えばいいという話なのかもしれないけれども。
どんな時に使う?
- シンプルなゴール
- 達成が非常に困難な高いゴール
- 例えば本書の巻末にある平鍋さんのマップのゴール「ビジネスと一体感のある開発を目指す」とか
- 実現手段が無限に想起でき、何を選択するかが一見してわからない
- 実現手段が検討もつかず、がんばって皆で考えないといけない
- 利害関係者が限定的で、相互の関係があまりない
本書の中にはサンプルで「金融取引処理の例」というもの出てくるのだけれども、これは割りと特殊な使い方な気がする(目標は「処理コストを10%削減する」)。