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勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

シャドーワーカーからアグリゲーターへ。日本版「ワークシフト」

読書メモ。書籍「アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方」を読んだ。ある程度の規模の会社に所属していて、ソーシャルな世界のスピード感と会社内の耐え難い遅さの断絶に違和感を感じている人が読むといい本だと感じた。しかし、アグリゲーターという呼称にはしっくりこない印象もある。社内アントレプレナーとは何が違うんだろう。

アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方

アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方

本書では、「進化する個人と出遅れている企業という構図が生まれた。そのギャップこそが、企業が抱えるあらゆる経営問題を引き起こしているのではないか」と仮説を立てている。
アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方 はじめに、より

個人に求められる力とは「新しい価値を生み出すこと」である。そうした力を備え、ビジョンを持って企業内外で活躍する人々を本書では「アグリゲーター」と呼ぶ。
アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方 はじめに、より

組織の資源だけでは勝ち抜けない時代

他の業種がどうなっているのかはわからないのだけれども、ソフトウェア開発をとりまく世界ではもはや自所属組織の資源だけではやっていけない状況になりつつある。例えば仕事のために、ある技術を扱いたいときに、社内に問い合わせても知見が得られることはない。資源はどこにあるのか、というと、社外のコミュニティにある。

これまで、企業は社員の成長にある程度責任を持ち、OJTや仕事を通して教育機会を提供してきました。しかしクラウド時代には今まで以上に、コミュニティを通してエンジニア個人が成長していくことが重要になるのではないか、という予想です。
クラウドの時代にはコミュニティがエンジニアの成長を支えていくのではないか - Publickey

これはあくまで一例だけれども、本書で扱われている問題意識と共感できる部分は多い。

情報格差はこれまで社内の地位とリンクしていたのだが、いつのまにか、個人の情報リテラシーの格差と取って代わられてきたのだ。感度が高いライフスタイルを持つ個人ほど豊富な情報を得て、自由に情報発信できて、人とつながる可能性がある。個人が見ている風景は変わりつつある。
アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方 はじめに、より

異論なし。

シャドーワーカー

同じような話はソーシャルネットワークが普及する以前にもあった。シャドーワーク―知識創造を促す組織戦略でいろいろ紹介されていて興味深い。

世のなかが「変化とスピードの時代」に突入しただけでなく、舞台は「フラット化」し、ますますグローバルに広がっている。予定調和で済むはずはないのである。予測しないことが起こるのが未来であり、予定調和の世界は存在しえない。必要なのは、調和を超えて変換を自ら起こし続けることだ。
シャドーワークとは、公式の組織で規定された権限、役割分担、業務プロセス、意志決定プロセスなどには乗ってこない、個人が自分の自主的な意志と裁量で創造的に編み出す仕事やそのための勉強、準備活動など全般を指している。平たくいえば、シャドーワークのない組織とは、言われたことを粛々とこなすだけの組織ということになる。
アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方 まえがき、より

価値創造をするために、組織の壁やルールを越えたところで活動するという話は昔からあった。ちなみに同書ではこういったことをする人のワークスタイルをプロデューサー型と読んでいた気がする(シャドーワーカーというのは私が勝手につけた呼び名)。

ただ、以前に比べて世の中の変化が加速してしまったために、シャドーワークが水面下の活動では収まらなくなってきたのだ。そして、ソーシャルネットワークの発達で、個人がネットワークを用いて解決できることが非常に多くなってきたのだろう。

アグリゲーター

さて、この本では組織の人材を以下のように分類しているのだけれども、ちょっとしっくりこなかった。

  • 従業員(サラリーマン) ・・・指示された事項を効率的に実施する
  • プロフェッショナル ・・・専門性あり、付加価値を生み出す
  • アグリゲーター ・・・プロフェッショナルの進化系。個人の力を以って組織を牽引する?

アントレプレナーシップというか、企業家精神があるかどうかという話だと思うのだ。

ドラッカーの)『イノベーションと企業家精神』は、最初は『イノベーション起業家精神』と訳されていた。現在は『企業家精神』として翻訳されている。「起業家」から「企業家」への訳語の変更は非常に大きな意味を持つ。デザイン思考はアントレプレナーの考え方と組み合わされたときに企業戦略を支援する方法となるのである。
デザイン思考と経営戦略
デザイン思考と経営戦略

いろいろ書いてしまったけれども、「いま」読むのが面白い本だと思う。日本版「ワークシフト」として読んでも良いかも。