勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

企業情報システムのモダナイゼーション

企業情報システムにはモダナイゼーションが必要だ、というInfoQの記事を見て考えたこと。単なる新規アーキテクチャへの移行の事ではなく、ソフトウェアライフサイクル全般のアップグレードについて。

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企業情報システムのモダナイゼーションとは何なのか

元記事を読むと非常に包括的な事が書いてある。自分なりに整理するとこういう感じなのだろうか。

  • ビジネスとITが共通言語を持つ
  • アジリティーを考慮したビジネスアーキテクチャを構築する
  • 情報システムをポートフォリオ管理し、移行のロードマップを描く
  • システム部門とビジネス部門の統合
  • 情報システムに関するナレッジマネジメント
  • コーディネーションとガバナンス、リスクマネジメントの確立

結局は、IT部門とビジネス部門の役割分担が変わるという事になるのだと理解している。IT部門が企業の情報システムを集約管理することは、ガバナンスの観点やや効率化というメリットがあった。しかし、システムが固定化してしまうというデメリットが大きな問題になってきているのだろう。

ちなみに「モダナイゼーション」で検索すると、もっとインフラよりというかSI臭の強いページがいろいろと引っかかってくる。単なる新規アーキテクチャへの移行だったら「基盤更改」と言えばいいような気もするが……

まぁトレンドということもあるし、総論については特に異論は無いのだけれども、問題はどうやるか、ということだと思う。

エンタープライズおんぼろ煙突

こういった話は昔からあったわけで、アンチパターンとしても整理されている。

おんぼろ煙突(Stovepipe)は、場当たり敵なアーキテクチャのソフトウェアシステムを名指すためによく使われる言葉だ。それは薪ストーブ、いわゆるだるまストーブの排気管の暗喩だ。木を燃やすと金属を腐食させる物質が出るので、薪ストーブは煙突の修理を頻繁に行わなければならない。その修理は、たまたま手元にあった材料を使って行われることが多く、その結果、薪ストーブの煙突は度重なる即席修理の痕跡で、つぎはぎだらけになる。そこで、多くのソフトウェアシステムのその場凌ぎ的な構造を指すために、使われるようになったのだ。
アンチパターン―ソフトウェア危篤患者の救出 全社的おんぼろ煙突化(Stovepipe Enterprise)、より

全社的おんぼろ煙突化は、企業の上層部が決める組織の区切りが原因であることが多い。コミュニケーションと技術移転を阻む組織構造が社内にある種の断絶を生み、それが全社的おんぼろ煙突化の特徴である調整欠如に結果する。全社的おんぼろ煙突化が経営に与える影響は、あらゆるシステム開発が大きくて不必要なリスクと費用を発生させることである。それらのシステムは相互運用性を欠き、統合化も困難なので、企業全体の効率を悪化させる。変化するビジネス要件への企業の適応能力は、全社的おんぼろ煙突化によって大きく阻害される。とくに今後重要とされる企業経営要件は、機敏軽快なシステム(agile system)である。それは、企業のシステムのほとんどまたはすべてを貫く相互運用性をサポートしているのでビジネス過程の変化に迅速柔軟に対応できるという、そのような情報化環境を指す。
アンチパターン―ソフトウェア危篤患者の救出 全社的おんぼろ煙突化(Stovepipe Enterprise)、より

アンチパターン―ソフトウェア危篤患者の救出

アンチパターン―ソフトウェア危篤患者の救出

じゃあどうするんだ、という話になるとややこしい。結局は「銀の弾丸は無い」ということになるのだろう。

  • 王道的にはEA(エンタープライズアーキテクチャ)の検討と導入を、ということになるのだけれども、あまり上手くいっている事例を見ないので、難しいんじゃないかと思っている
  • 「アジリティ」というキーワードはあるけれども、アジャイル開発とこの話題は無関係である。結果として情報システムがアジリティを獲得することが肝要であって、それをどのような開発プロセスで実現するのかは別の問題だ。

最近見た資料だと(少し古いけれども)メソドロジック山岸さんのこの資料あたりが実践的で良いなと思っている。

実際にやれるか、は別の話だけれども。