勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

「Plan B」を読んだら「アジャイルな計画づくり」だった

当初計画に固執せず、状況に応じた迅速な計画変更を行うことについて書かれたビジネス書「PlanB―不確実な世界で生きのびるための11の法則」を読んで考えた事。ソフトウェア開発における計画というものについて。

Plan Bに書かれていること

あまり内容を調べずに手にとった本書だが、多くの章が「Plan A」(初期の計画)を立てることに割かれているのが意外だった。あくまで「変更を前提に計画を立てる」のであって「計画を行わない」わけではないのだ。

どの理論も素晴らしく、現実的にも十分効果を発揮した。だがそれは、世の中の移り変わりがこれほど速くなるまでの話だ。物事の変化がゆっくり起きているときは、経営者が年に一度プランに修正を加えればいいのでトップダウン方式でうまくいく。しかし、変化のスピードが早くなると、このやり方ではうまくいかない。
PlanB―不確実な世界で生きのびるための11の法則 はじめに、より

というわけで、本書は「変更しやすい計画の立て方」が書かれた本だとも言える。

「変化を抱擁する」ことと、計画を立てない事は違う

ソフトウェア開発の世界でも似たような考え方としてアジャイル開発プロセスがある。アジャイル開発プロセスは「計画を行わない」という解釈(誤解)もあるようだ。これは大きな間違いだと思う。

しかしユーザにとってみると、アジャイル開発は不透明で分かりづらく、故に不安を生んでしまうもののようだ。まるで開発プロセスが無く、開発方針も定まっていないように見えると、アジャイルプロジェクトに加わったとある人はコメントしている。

別にアジャイル開発プロセスを採用しなくとも大変参考になる良書「アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~」でも、計画をすることを強く推奨している。

  • 計画より計画づくりを重視する
  • 計画そのものを頻繁に変更するものとして取り扱う

とすると、まったく「PlanB―不確実な世界で生きのびるための11の法則」と同じ事を言っているとも言える。

ある程度の計画を考えるのは大変だ。どうせ不確定要素によって計画通りに進むことはない。見積もった期間で作業が完了するかどうかはわからない。

とはいえ、計画を立てることには意味がある。ノープランで良いことなどない。

「計画することがすべてだ。立てた計画はどうでもいい。」
――陸軍元帥 ヘルムート・グラフ・フォン・モルトケ
アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~ 1章 計画の目的、より

「敵に遭遇すれば計画は必ず変わる」
――陸軍元帥 ヘルムート・グラフ・フォン・モルトケ
アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~ 2章 なぜ計画づくりに失敗するのか、より

あとは、立てた計画に固執しないことだ。マイク・タイソンの言葉を引いた以下の一節が素敵だと感じた。

かつてマイク・タイソンは「プランなら誰にでもあるが、それは顔面にパンチをもらうまでの話だ」と言った。ビジネスでは、たとえ顔面を殴られた後でも賢明な判断を下す必要がある。
PlanB―不確実な世界で生きのびるための11の法則 はじめに、より