勘と経験と読経

略すとKKD。ソフトウェア開発やITプロジェクトマネジメントに関するあれこれ。

はみだしシェフ、あるいはソフトウェア開発と厨房のこと

レストラン(シェフ)の世界とIT業界の類似性について書かれた記事がとても興味深い。そういえば、元MicrosoftIEのマネージャだったScott Berkunも似たようなことを書いていたので、ここで紹介したい。

私の知人のウェブ開発者は、自分のやっている作業が宇宙開闢以来、誰も行ったことのないものであると信じていました。
(中略)
私はこのウェブ開発者に、お気に入りのレストランに行き、お客が詰めかけている時の厨房を見学させてもらうように頼んでみることを示唆しました。厨房を見ることは色々な理由でお勧めできます(アンソニー・ボーデインの素晴らしい書籍『Kitchen Confidential』をご覧ください)。その際の見どころは生産性です。忙しい時間帯にプロの厨房で繰り広げられている迅速なタスクマネジメントを初めて見た人は、自らの作業の厳しさというものを再考させられるはずです。厨房の奥にあるコンロには複数のフライパンが火にかけられ、注文されたさまざまな料理がそれぞれのフライパンで調理されており、その出来具合もさまざまとなっています。そしてコックは、これらのフライパンと格闘しながら、調理台とコンロの間を往ったり来たりし、ウェイターはお客からの注文やクレームを伝えるために厨房を出たり入ったりしているのです。
アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE) 1.2 ウェブ開発、厨房、緊急治療室

まさに『Kitchen Confidential』ではこの厨房での生産性に関して恐ろしいほどに生き生きと興味深く描かれているので一読をお勧めしたい。

「十二番行きます!」と、すでに大量のステーキとチョップ、ハマチをいくつか仕上げていたカルロスがいう。私のほうはどうかという合図だ。「よし、十二番行くぞ!」と私は応じる。ミゲルがジャガイモを油に落としはじめる。私はブーダン用のマッシュポテトをオマールに命じると、ソテーパンのリンゴを二、三回とトスし、レバーソースを温めて皿に盛り、オーブンからポークミニョンを出して、縛っていた糸を外し、キジの付け合わせのポテトと野菜を温め、バックバーナーにずらりと並んだ鍋の間隙を縫ってキジ用のソースを煮詰め、ムール貝を火から下ろして用意してあった深皿に移し、ミゲルに向かって「黒いイチモツ用のフライドポテト」と大声で叫びつつ、身をひるがえして鴨の胸肉の焼け具合を見る。
キッチン・コンフィデンシャル (新潮文庫)

それ以外にも、マネジメントに関して非常に考えさせられる興味深い書籍だ。

この本は本当に全部お勧めなのだが、本書の最後の章「で、シェフになりたいんだって?」に書かれているアドバイスを紹介したい。

  • 全身全霊を捧げよ。
  • スペイン語を学べ!
    • (これは本書で紹介されている業界の大半の人がスペイン語を話すからだ)
  • 盗むな。
  • 遅刻をしてはいけない。
  • 言い訳をしたり、他人を責めたりしてはいけない。
  • 急用で休まない。
  • 怠け者、だらしないやつ、ぐずは歓迎されない。
  • 人間の愚かさと不公平の実態を覚悟してよく見ること。
  • 最悪の事態を予測せよ。
  • できるかぎり嘘をつかないようにする。
  • オーナーの名前がドアの上にあるレストランは避けよ。
  • 履歴書はよく考えて書け!
  • 読め!
  • なにごとにつけ、ユーモアのセンスをもつこと。