『ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)』を読んで思ったこと。ソフトウェア開発をする際には、特に「観察」と「根拠ある解決策の提案」が重要だと考えている。同書はソフトウェア開発について扱ったものではないけれども、学ぶことの多いまさに入門書だ。
なお、この本は以下のブログを読んで手にとったのだった。
本書は現在大阪ガス行動観察研究所所長をされている松波さんによる、実際の「行動観察」の現場ルポのような本となっている。随所に「行動観察」の理論やエッセンスなども記載されているが、それよりも「行動観察」の姿勢や考え方の紹介が中心である。
①必ず現場に行って、人間の行動を観察すること。適切な解釈、よい問題解決法(ソリューション)を得るためには、実態を深く知らなければならない。
②根拠あるソリューションを提案すること。ソリューションは、単なる「勘」で出すのではなく、「こういうことが科学的にわかっているから、この実態はこう解釈される。なのでソリューションはこうしたほうがよい」と論理的に説明できなければならない。
ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書) 第1章 行動観察とは何か?(P13)
この②の部分が難しいのは言うまでもない。本書の事例でも松波さんが悩み苦しんでいるところが、とても参考になる。
ソフトウェアを開発する場合、少なからず開発者には観察眼が求められる。顧客や利用者に「どんなソフトウェアが欲しいのか」と聞いても答えを得られないことが多いからだ。顧客(ユーザー)が自身の要求を理解していない事も多いので、相手の言い分を聞くだけでは駄目でよく観察して、ユーザーが説明してくれないことまで察してソフトウェアの仕様を考えることになる。
さてこの際に本当に「根拠あるソリューションを提案」できているのだろうか、ということを改めて考えさせられる。
- 声の大きな顧客の意見を採用していないか
- 交渉が面倒になって、言われた通りの仕様にしていないか
- 過去の事例、再利用できる情報などに当てはめて、手抜きをしていないか
- (もちろんある種の再利用によってコストを抑えることが必要な場合はある。けれども、特に要求レベルでそれをやってしまうのはどうかと思う)
とまぁいろいろ考えてしまったのだけども、本書は単に読み物としてもかなり面白いので、お勧め。